金融

肥大化する第3次補正予算案 問われる費用対効果

 自民党の下村博文政調会長は30日、首相官邸で菅義偉(すが・よしひで)首相と会談し、党でまとめた追加経済対策の提言を手渡した。新型コロナウイルスの感染第3波で、一時は段階的縮小も模索した経済対策は一転拡充を余儀なくされ、裏付けとなる令和2年度第3次補正予算案の規模は20兆円超に拡大する方向だ。1、2次補正の費用対効果を踏まえ、国民の生活と経済活動を効果的に支えられるかが問われる。

 「(需要と潜在的な供給力の差を示す)需給ギャップが34兆円程度ある。ぜひそれを埋めるだけの大型の補正予算を組んでほしい」

 下村氏は提出後、記者団に対し首相へこう要望したことを明らかにした。コロナ禍の爪痕は深く、国内経済は7~9月期で34兆円程度の需要不足が残る。感染第3波で景気の持ち直しは鈍化しており、年明けには再びマイナス成長になる「2番底」も懸念される。

 首相は「国民の皆さんが安心してもらえるような補正予算を組む必要がある」と答えたが、具体的な予算規模に言及はなかった。政府は提言を受け12月上旬までに3次補正をまとめる。

 提言では、コロナ対応の拡充や、首相が重視する行政のデジタル化、温室効果ガス排出削減に寄与する研究開発支援などコロナ後を見据えた施策を要望した。7月の豪雨被害からの復旧や復興など防災・減災、国土強靱化の実行も訴えた。

 議論を呼びそうなのが、来春の大型連休ごろまで延長するよう求めた業界支援事業「Go To キャンペーン」だ。大和総研の試算では、トラベル事業の波及効果は4・9兆円と予算規模の3倍以上に当たる大きな需要を喚起した。ただ、感染再拡大の原因だと批判する声も強く、地域や期間ごとに異なる割引率を設定するなど、観光客の分散化に向けた運用面の工夫が必要との指摘もある。

 雇用対策では休業手当の一部を国が補助する雇用調整助成金を現行水準で2月末まで延長する。完全失業率は9月時点で3・0%にとどまるが、助成金の効果は大きく、一時検討された年明けからの特例縮小が現実になれば失業者が急増すると懸念されていた。

 一方、中小・小規模事業者の減収を補う持続化給付金は来年1月で終了する方向だ。倒産防止に効果を発揮したが、不正受給も相次ぎ、功罪相半ばする。大和総研の佐藤光シニアエコノミストは「成長分野への投資を促す政策に切り替えるべきだ」と指摘している。(永田岳彦)

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