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国内特許出願、36年ぶりに30万件割れか

 日本における年間の特許出願件数が30万件を割って29万件台になる可能性が出てきた。実に1984年以来、36年ぶりのことだ。特許出願統計速報値をつなぎ合わせると、9月までで21万7485件、前年同期比6.03%減となる。前年の確定値が30万7969件。同率を掛けると、今年は28万9398件となる。30万件に1万件余り届かない。

 「特許出願減少傾向は長年続いているが、今年は新型コロナウイルスの影響が加わった」(特許庁幹部)と言うように、政府の緊急事態宣言が出された4、5月は企業のリモートワークへの移行作業もあり、前年同月比10%前後の大幅減少となった。その後も6月を除き、5%以上の減少が続く厳しい状況にある。

 海外はどうか。米国では4、5月に前年同月比4%前後の減少が続いたが、米国特許商標庁の年次報告書では2020年度(19年10月~20年9月)の特許出願件数は、暫定値ながら、65万3311件、前年比2%の微減に収まったことを報告している。一方、中国は今年2月末まで前年同期比8.7%減としたが、9月末には110万2863件、10.47%の大幅増を達成した。韓国は6月までで、2.1%増の9万9336件となった。日本の低迷が目立っている。

 特許出願件数の減少は将来の産業競争力に影響する。加えて特許庁の将来の歳入すなわち審査請求料や特許料などにも関係してくる。特許庁の庁内経費はもとより、次代を担う大学やベンチャー、中小企業向けの支援事業に使われる原資でもある。システム開発や庁舎改修工事が進行、歳出が膨らむ中だけに、特許庁は苦しいところだ。

 ちなみに日本で特許出願件数が年間10万件を超えたのは1969年。出願制度が始まった1885年から84年間もかかった。20万件超えはその12年後の1981年、30万件超えはさらに4年後の85年と加速。98年には40万件を超え、2001年に43万9175件となりピークに達する。40万件台を9年間維持したが、07年から19年まで13年間は30万件台。ほぼ毎年減少を続け、この5年間は31万件台を前後している。

 日本の特許出願件数の減少が続いた背景には企業で知財戦略や特許管理の意識が浸透し、出願案件の選別や登録率向上を進めてきたことがある。グローバル化が進展し、海外事業防衛のため海外出願重視になってきた点も大きい。コロナ禍を機に底打ち反転、出願増加を期待したい。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

 ■国内特許出願の月次推移

 月   2020年(件) 前年同月比(%) 2019年

 1    2万1052  ▲ 2.11  2万1506

 2    2万3809  ▲ 6.87  2万5565

 3    3万7057  ▲ 3.44  3万8377

 4    2万0831  ▲11.39  2万3508

 5    1万9583  ▲ 9.95  2万1746

 6    2万5316  ▲ 0.13  2万5350

 7    2万3039  ▲ 6.74  2万4705

 8    2万0197  ▲10.59  2万2589

 9    2万6601  ▲ 5.30  2万8092

 1~9 21万7485  ▲ 6.03 23万143

 ※1日時点。特許庁の速報値を基に作成。▲はマイナス。1~9月は前年同期の比較

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