テクノロジー

初代はやぶさの「教訓」生かした快挙

 探査機「はやぶさ2」は6日、小惑星リュウグウの試料が入ったとみられるカプセルを地球に帰還させ、日本の宇宙探査に新たな歴史を刻んだ。計画はここまで全て成功という画期的な成果だ。故障続きだった初代はやぶさの苦い教訓を生かし、その技術を継承して進歩させたことが快挙につながった。

 初代はやぶさは平成22年、世界で初めて小惑星の物質を地球に持ち帰ることに成功したが、往復の7年はトラブルの連続だった。

 推進力を生む心臓部のイオンエンジンは燃費に優れ、長距離飛行に向いていたが、飛行中に電極が摩耗するなどして4基のうち3基で故障や劣化が発生。飛行に欠かせない姿勢制御装置も衝撃に弱く、3台のうち2台が故障した。

 はやぶさ2はこれらの課題を徹底的に洗い出し、探査機の生命線ともいえる飛行性能を改良した。イオンエンジンは設計変更で寿命を延ばし、推進力を25%向上。姿勢制御装置も4台に拡充するなど機体の完成度を高めたことが、今回の順調な飛行につながった。

 初代はやぶさは技術の検証と蓄積を主な目的とし、その成果を土台にした2代目を「本番」と位置付ける戦略を進めた。初代の責任者を務めた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎シニアフェローは「はやぶさが作った小さな突破口を、本番機のはやぶさ2が大きく開いた。それが今回の成功の理由だ」と話す。

 小惑星の試料採取でも、初代はやぶさは地表の岩石を砕いて破片を舞い上がらせるための弾丸を発射できず、機体が着地した衝撃でわずかに舞った微粒子しか採取できなかった。はやぶさ2はこの教訓から、弾丸を発射できなくても多くの試料を採取できるように、筒状の採取装置の先端を内側に折り曲げ、舞い上がった破片が引っかかりやすくする工夫をして臨んだ。

 2回の着地と採取作業は予定通りに成功し、初代よりかなり多い試料を採取したとみられる。地下の物質を採取するため初めて挑んだ難度の高い人工クレーターの作製もやり遂げ、初代を超えて、世界をリードする独自の技術を確立した。入念な訓練と検証作業、メーカーとの緊密な連携も成功を支えた。

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