5子会社集約、横の連携強化
成長を阻害する要因の一つに挙げられるのが縦割りの社内風土だ。グループ約27万人を擁する大企業となり、セクショナリズムが横行し、環境変化のスピードに対応できないのだ。来年6月に社長に就任する楠見雄規常務執行役員も「競合他社に比べてスピードが負けている」と認める。
外部からは「一体感がない」とも評される。楠見次期社長自身、「大きな会社なので、本当のことを言ってもらえない。忌憚(きたん)なく、忖度(そんたく)なく、いろいろなことを言ってもらえる風土にしたい」と話すほどだ。
こうした社内風土を変えようと、津賀社長は16年以降、片山栄一常務執行役員(メリルリンチ日本証券元アナリスト)や樋口泰行専務執行役員(日本マイクロソフト元会長)、松岡陽子常務執行役員(米グーグル元バイスプレジデント)ら外部人材を積極的に登用している。
ただ、ある幹部は「みんな頭では変わらないといけないと理解しているが、グループ全体に広がらない」と打ち明ける。サービス系の中堅社員からも「物売りの文化がメインで自分たちの事業メリットが伝わらず、社内で新しいことをしても時間がかかる。外部企業と話をした方が速い」との声も漏れる。
パナソニックは社長交代に伴い、21年10月にカンパニー制を廃止し、22年4月に持ち株会社制に移行する。社名を「パナソニックホールディングス」に変更し、主力4子会社を傘下に置き、権限移譲を行い、自主責任経営を徹底させる。
組織再編の狙いは各事業の競争力強化とグループ全体で再成長を目指すことだ。持ち株会社は全体の成長戦略の策定・実行や各事業会社を支援する。
最大子会社となる「パナソニック」に家電や空調、電設、中国・北東アジアなど5つの会社を集約し、苦手とされる横の連携を強化。この組織再編で社内風土改革やビジネスモデルの転換も加速する。
社内には現状を変えようとする小さな波はある。経営者のかじ取り次第で、大きな波に変えることはできる。楠見次期社長が大きな波を作れるかが、パナソニックの未来を左右する。(黄金崎元)