明治安田生命保険は3年後を視野に入れた人事異動や評価などに人工知能(AI)を活用する人事運用制度の導入に向け、内勤社員約1万人の人事情報を網羅し一元化したシステムの運用を始めた。社員の経歴や評価、取得資格などの能力をワンストップで閲覧でき、長期的視点での人材育成や社員個々の意欲や適性に基づく成長・活躍を後押しする人事情報プラットフォームに位置付ける。
運用開始した「タレントマネジメントシステム」は社員、上司、人事担当それぞれに利用価値を高めた点が最大の特徴で、生保大手でAI活用の人事を前提に人事情報システムを構築したのは初めてという。浅野芳一執行役員人事部長はシステムの狙いを「人事情報を所属長、社員それぞれが確認でき、それを踏まえ今後のキャリア形成をアドバイスできるツールとして開発した」と話す。
一般社員は自らのこれまでの経歴や自己開発、評価などを閲覧でき、今後のキャリア形成や自己開発計画に反映できるほか、先輩社員や上司の経歴情報「MYプロフィール」を参考に自らのキャリア設計にも生かせる。キャリア相談も可能で、経歴開示・キャリア相談受付には経営管理職・主要職制の約9割の約700人が同意した。
主要職制以上の経歴開示画面への閲覧回数は8月下旬の試験運用開始からこれまでに延べ約6万回を数え、若手社員を中心に積極的にキャリア設計に活用していることがうかがえる。
一方、上司は部下がこれまでにどのような上司の指導を受けてきたかなど詳細な評価や経歴などを閲覧でき、部下の特性を把握したうえで今後の指導・育成に反映できる。またイクボス度、従業員意識などの各種調査から組織の「健康診断」メニューを設けており、所属長本人と組織に対する「健康状態」を確認できる。人事担当には人材検索機能の充実で、あるポストへの登用候補を過去の経歴・実績を踏まえ即座に選抜できるなど、適材適所の人事が可能になり、業務効率化にもつながる。
システム構築はこれまで分散していた人事情報の一元化から始め、社員が自らのキャリアを考えるツールとしての機能を付与した。今後は社員個々の膨大なデータを蓄積しながら適時バージョンアップし、最終的に人事担当が判断するものの、科学的で客観性を備えた透明性が高く、社員が納得できるAI活用の人事運用制度につなげる。