農林水産省によると、平成30年の千葉県のネギの産出額は173億円、収穫量は6万2600トンと、ともに全国首位を誇っている。県内では、主に九十九里地域(山武市、横芝光町)や東葛地域(柏市、松戸市)、茂原市などで栽培されている。市町村別の産出額を見ても、山武市が全国4位のほか、横芝光町(6位)、柏市(9位)も上位に位置しており、全国屈指のネギの産地となっている。
ネギは、中国の西部地域が原産地とされている。日本には8世紀頃に伝わったとされ、「日本書紀」にもネギについての記載があり、古くから親しまれてきた。千葉県では、ネギ栽培が江戸時代後期に柴又周辺から対岸の松戸側に伝わり、あじさい寺(松戸市本土寺)周辺が主産地であったことから、「あじさいねぎ」の名で昭和40年代頃から本格的に生産が広がった。
全国トップのネギ生産を誇る千葉県だが、課題もある。農家の高齢化や後継者不足から、ネギの収穫量はこの10年間で約1割程度減少している。このため、生産力の維持・向上に向けて、県内のネギ農家や農協では、ブランド化を推進してきた。
ブランドネギというと埼玉県の「深谷ねぎ」等が全国的に有名だが、松戸市で栽培されている「矢切ねぎ」も負けてはいない。白身が太く、しっかりとした歯応えや強い甘みを持つことが特徴で、「焼いてよし、鍋によし」と言われ、さまざまな料理法で楽しめる。過去には全国農産物品評価会で農林水産大臣賞を3度受賞しており、贈答品としても人気を博している。
JA山武郡市のブランドネギ「九十九里海っ子ねぎ」は、平成14年の台風21号の被害をきっかけに誕生した。多くの野菜が塩害を受ける中、ネギは被害が少なく、食べてみるとむしろうまみが増していたため、翌年からは海水を散布して栽培している。ネギは一般的に秋冬・春の出荷が主となるが、九十九里地域の農協が中心となって、全国的にネギが品薄となる4~5月に出荷する初夏ネギの栽培に力を入れ、「プレミアム夏ねぎ」としてブランド化。高品質で柔らかく、みずみずしい味が特徴だ。
これから本格的な冬に向けて、県産ネギも旬を迎える。今年は新型コロナウイルスの影響で家庭内で過ごす時間が増えた人も多いだろう。冬の定番である鍋をはじめ、さまざまな料理で県産ネギを楽しんでみてはいかがだろうか。(ちばぎん総研研究員 小柴早織)