高論卓説

好日山荘、DXでECモール展開 アウトドア市場拡大の好機つかむか

 創業96年、アウトドア業界で日本初の専門小売業といわれる好日山荘(神戸市、2019年11月期年商124億円、直営店43店舗)が第5世代(5G)移動通信システム、クラウドサービス、人工知能(AI)などを活用してビジネスや生活の質を高めるデジタルトランスフォーメーション(DX)に乗り出した。これまで手掛けてきた仕入商品を扱う従来の自社EC(電子商取引)サイトを廃止し、さまざまなアウトドア商品を扱うECサイト「GsMALL(ジーズモール)」を開始した。

 ジャスダックに上場していた好日山荘が経営危機に陥り企業再生ファンドがTOB(株式公開買い付け)で株式を取得して非公開化したのが12年。その後17年10月に経営再建を託され池田真吾氏が社長に就任した。

 「3年ほど前からECモール(仮想商店街)事業立ち上げの構想を持っていましたが、このときはまだ就任から間もなく、会社の立て直しが最優先でした。ただ、日本にアウトドア専門のECモールが存在しないのは、商品知識はもちろん、アウトドアの経験や顧客への説明能力、アフターサービスなどの求められる専門性が高いために、これまで誰もやってこなかったことを知り、大きな関心を持ちました」(池田社長)。

 19年夏には主要事業の小売部門の黒字化のめどがたち、ECモール事業への進出を決断、20年1月から準備を進めていた。しかしコロナ禍による緊急事態宣言などで店舗は大きな打撃を受け、このまま進むべきか、あるいは新規事業を遅らせるのか、重要な決断を求められた。

 このとき池田社長は進むことを決断した。実はコロナ禍で「3密」を避けたアウトドア、特にキャンプ、室内で行う「おうちキャンプ」などのニーズが高まり国内市場は急拡大、異業種からの参入も加速、指をくわえて見ていては出遅れると判断したからだ。

 「新型コロナウイルスの影響でアウトドア需要は増えていますが、このままでは一過性で終わってしまう。この業界は、質の高いモノづくりを行いながら強い販売網を持っていないメーカーがたくさんある。アウトドアの専門領域ごとに区切られ、連携も十分ではない。例えば、釣りをする人は釣りの道具も登山の道具も必要ですが、ワンストップでそろえられる店がないのです。このままでは裾野を広げていくのが難しいと思ったのです」(同)。

 好日山荘はこれまで仕入商品を米アマゾン・コムやヤフーショッピングなどの総合ECモールと自社ECサイトで販売。EC部門の20年11月期の売上高は前期比50%増の見込みだが、自社ECサイトを閉じてアウトドアの専門店や関連事業者が直営店を出店するECモールを展開する決断をした。

 「自社ECサイトをやめて一から客を集めるわけですからまさに冒険です。しかしこれまで培った専門店としてのスキルも最大限に生かせますし、出店者を増やせば品ぞろえを急拡大できます」(同)。

 今後はマウンテンバイクやカヌー、カヤックなどこれまで扱っていなかった商品も取りそろえ、5年で100億円の取扱高を目指していくという。コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされているが、DXは、大企業だけではなく、苦境に立たされた中小企業にとっても重要な活路になっていくのではないだろうか。

 松崎隆司(まつざき・たかし) 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『ロッテを創った男 重光武雄論』など多数。埼玉県出身。

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