Wow-Food社長・辻慶穂
2020年は世界全体が新型コロナウイルス感染で明け、コロナ禍のまま暮れようとしている。消費者は日常食によって「免疫力、抗ウイルス、腸内環境の良化、スタミナ」といった課題を解決し、なりたい自分に向かっていく方向性が強まっているように思う。
このように求められるものが変わると、食品事業への他業種からの参入が加速し、これまでの常識や秩序が通用しなくなる。食品事業者には「なぜ開発したか」の説明がより一層求められ、情報価値の向上とともに、「世界観があり、見せ方、伝え方が上手な企業」が台頭してくるだろう。
消費者の「なりたい自分」を後押ししてくれるような新ブランドの登場や、新たな価値は、食品業界で目立っていない。米国では、アマゾン・コムが買収した自然食品スーパーのホールフーズ・マーケットや、全米の企業評判トップ・働きがいのある会社3位に選ばれた大型スーパーのウェグマンズなど、小売店に独自の世界観がある。
一方、わが国はデフレなので、世界観を体現する前に「採算が取れない」「成績を出せ」といった難しい面がある。戦後のベビーブームが起きた団塊の世代が75歳を超えてくるのは22年からで、高度経済成長を支えた経営者が残っていることも、全体設計の抜本的な見直しを遅らせている。
このような状況で、Wow-Foodはニーズなどの情報を世界の小売店や消費者からリアルタイムで収集できる仕組みを構築して、新しい食を切り開いていこうとしている。半面、デジタル時代だからこそ、モノは体感で見極め、顧客に体験してもらいながら届けていけるようにしたい。「体に良いものは何か」という原点を踏み外さず、アンチエイジング、酸化還元、腸内環境などのテクノロジーを形にしていきたい。
そこで留意しなければならないのは、狭い客層に満足してもらうことだ。大手食品メーカーはこれまで、1アイテム数十億円の売り上げを数年内に獲得できるかを商品化の目安としており、その陰で満たされない「隙間ニーズ難民」を生み出してきた。客層の幅が狭くなると、ビジネスとして1カ国だけでは成り立たない。「おいしい」「健康」「事業者収益」の普遍的価値を軸に、「豊かさ」の価値観を継続的に訴求していく必要がある。
ESG(環境・社会・企業統治)経営のように、社会や消費者に対するメッセージ性が高まっている。Wow-Foodは「なりたい自分をサポートできる」ブランドとして「豊かさ」を提供し、存在感を発揮していきたい。
【プロフィル】辻慶穂
つじ・よしのり 法大経卒。ユアサ商事、西本貿易(現西本Wismettacホールディングス)を経て、2015年Wow-Foodを設立。素材本来の力を生かしたもぎたて低温搾汁のジュース「Wow-COLD PRESS」や、植物性発酵飲料「Wow-Kombucha」などを開発・販売。46歳。石川県出身。