令和3年度予算案には、菅義偉政権の看板政策である行政や社会のデジタル化に向け、1兆円規模の予算が盛り込まれた。来年9月に新設され、司令塔の役割を担うデジタル庁の設置費用81億円や、省庁のシステム整備費8000億円などが主な項目だ。新型コロナウイルスの流行では日本のデジタル化の遅れが露見した。地方や教育、企業など幅広い分野でデジタル化を促し、さまざまな手続きが非対面で完結する、効率的な社会を目指す。
新型コロナの経済対策として実施された10万円の特別定額給付金では国のシステムと自治体システムが異なることからデジタル上での連携ができなかった。このため、多くの自治体で住民データを紙に打ち出して確認するなどの事態が生じ、給付が遅れる要因となった。
3年度予算では、こうした課題を解消して“つながるデジタル”を実現するため、システムを標準化する費用として4億円を計上した。また、地域のデジタル化推進のため、3、4年度の2年で計4000億円を地方交付税で措置することも決めた。
さらに、住民が役所に行う申請などをオンラインで行う場合に最も重要になる本人確認に関連した予算も盛り込まれた。
オンライン手続きで本当に本人の申請かどうかを確認する上で最も有効な手段がマイナンバーカードとされるが、普及率は23%にとどまる。そこで4年度末にはほとんどの国民がカードを保有することを目標に、普及促進策として1325億円を計上した。さらにカードに登録したキャッシュレス決済を使えばポイントが還元される「マイナポイント事業」も来年9月まで延長し、対象者も4000万人から5000万人に拡充する。
デジタル化は経済成長にも不可欠とされ、デジタルを活用した産業の転換に496億円を計上。ほかにも民間のサイバーセキュリティー人材の育成(19億円)やデジタル教科書の普及促進事業(22億円)などが盛り込まれた。