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市場の硬直化懸念も 携帯電話料金の横並び変わらず ソフトバンク新プラン 

 ソフトバンクが打ち出したNTTドコモへの対抗策は同じデータ量を全く同じ価格で後出しする内容だった。値下げはしても、これまで料金の高止まりの原因となっていた横並び体質は変わらないことに消費者からは落胆の声が上がる。市場が硬直化すれば、寡占する大手がますます力を強め、中長期的にみて持続的な低廉化が滞る懸念すらある。

 「できる範囲で特徴は作っている。ソフトバンクらしい選択肢を出していきたい」

 ソフトバンクの榛葉淳副社長は新ブランドで無料通信アプリのLINE(ライン)が使い放題になることや、サブブランドの「ワイモバイル」でドコモにない価格帯をそろえていることなどの独自性を強調した。ただ、目玉の新ブランドはドコモの新プランを後追いするのが精いっぱいだった。

 ドコモが収益悪化も覚悟の上で値下げに踏み切った結果、追随する以外に選択肢がなくなった形だ。ソフトバンクの発表内容を知った消費者からは「ドコモと全く同じで失望した」との声も出た。

 携帯電話市場は、中長期的には、技術革新や設備の効率化などで事業者のコストが下がるため、消費者は継続的に料金値下げの恩恵を受けられる。

 ただ、これまではある1社が新しい料金を出すと、残る2社が同様の料金プランを導入する。それを繰り返したことで、大手3社の差がなくなり、競争原理が働かず、高止まりの主因となっていた。各社とも20%という高い利益率を生み出しているのもそのためで、「4割値下げ」発言の菅義偉首相に目をつけられたのもこうした背景がある。

 ソフトバンクがドコモと変わらないプランを出してきたことで、KDDI(au)も横並びとなる可能性が高い。各社の横並び体質を打破しなければ、動画視聴プランを付けるといった小手先のプラン変更に終始していた以前の高止まりの状況に後戻りしてしまう。

 一方、大手が値下げに踏み切った結果、価格競争を活性化させると期待されて市場参入した楽天や仮想移動体通信事業者(MVNO)との価格差は縮まった。資本力で劣るMVNOが撤退すれば、大手がさらなる値下げに踏み込む理由は乏しくなるばかりだ。大手だけでなく、業界全体の健全な競争が起こらなければ、せっかくの値下げも一時的なものになりかねない。(高木克聡)

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