高論卓説

かんぽ生命の親離れ 経営の自由で不正販売体質変わるのか

 かんぽ生命保険が3000億円規模の自社株買いを行い、持ち株会社である日本郵政の出資比率を現在の64%から50%以下に引き下げる方針を固めたもようだ。日本郵政が持つかんぽ生命の株式を自社で買い取り・償却するということであろう。これに伴いかんぽ生命の資本に相当する基金が減少することから、同時に資本性のある劣後債約1000億円を公募し、ソルベンシーマージン比率(不測のリスクに備えた支払い余力)の確保を目指すという。

 日本郵政は11月13日に発表した中期経営計画の中で、「郵政民営化法に基づき、金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の株式はその全部を処分することを目指し、金融2社の経営状況、当社および日本郵便のユニバーサルサービス確保の責務の履行への影響などを勘案しつつ、できる限り早期に処分。まずは、日本郵政が保有する両社の株式について保有割合50%程度とし、新規業務の事前届け出制への移行を目指す。引き続き、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置付ける」と打ち出していたことから、日本郵政の出資比率を引き下げることに違和感はない。

 しかし、その方策が、これまでのような市場売却ではなく、かんぽ生命による自社株買いであることに「虚をつかれた」思いがした。

 これまでのように日本郵政が保有するかんぽ生命の株式を市場売却することは、いわば「親の子離れ」ともいえる処方であるのに対し、今回の自社株買いは「子の親離れ」といえる方策ではないかと思う。子であるかんぽ生命が自社株を買い上げて親(日本郵政)から離れ、独立することで自由を得るという構図だ。一種の「奇策」といえなくもない。もちろん、日本郵政グループ全体としての財務戦略の一環であろうが、なぜ、そこまでして急がなければならないのか。

 日本郵政傘下の金融2社には、民業圧迫を回避するため郵政民営化法により民間銀行や保険会社よりも厳しく業務を制限する「上乗せ規制」が課されている。持ち株会社である日本郵政を通じて国が株式の過半を保有する半官半民の金融機関であるためで、預け入れ限度額や新規業務について郵政民営委員会の認可が必要で、自由な業務展開が制限されている。

 一方、金融2社に対する日本郵政の持ち株比率が50%以下に引き下げられれば、中計で明記されているように上乗せ規制が緩和され、新規業務も「認可」から「届け出」に移行できる。かんぽ生命はその自由を得たいのだ。

 背景にあるのは、保険商品の不正販売への反省と経営の危機感だろう。不正販売の問題は、上乗せ規制で保険商品の開発に制限がある中、過度なノルマが原因で起こった側面がある。

 このジレンマから解放されるためには、自社株買いという「奇策」を講じても早期に経営の自由度を高める必要があるとの判断だろう。その意味で自社株買いは仏教でいうところの「方便」のようなものかもしれない。

 かんぽ生命による自社株買いが実現すれば、次の焦点はゆうちょ銀の対応ということになろうが、競合する地方銀行や信用金庫などの反発が避けられない。こちらのハードルは高そうだ。

 森岡英樹(もりおか・ひでき) ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。

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