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後追いファンを獲得し「鬼滅の刃」興収歴代1位 配信と映画館の“連動”奏功

 アニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が324億7000万円に達し、国内で上映された映画では「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督、316億8000万円)を抜いて歴代1位となった。新型コロナウイルス禍を背景に積極的な多メディア展開や会員制交流サイト(SNS)による拡散で「鬼滅」人気は急上昇。動画配信と映画館が“連動”する新たな構図も浮かび上がった。

 公開後に投稿激増

 「世界の映画界が厳しい中、本当に運が良かった」。15日、東宝の記者会見で市川南常務は安堵(あんど)の言葉を口にした。今年の同社の興収総額は歴代8位の700億円前後になる見通し。半分近くが「鬼滅」頼みの格好だ。

 日本映画製作者連盟によると、10月16日の公開後、「鬼滅」は興収145億円を約半月でたたき出した。前年同月に大手12社の全作品が1カ月で積み上げた133億円を軽く超え、疲弊したシネコンの救世主となった。

 ヒットの要因を、市川常務は「何より作品の素晴らしさ」としつつ、コロナ禍の環境に言及した。家にこもって「鬼滅」の原作漫画やアニメに触れる人が増え、映画への関心が高まる中で公開を迎えた。加えてハリウッド大作の公開延期で「スクリーン数と上映回数を最大に確保できた」。

 宣伝戦略も緻密だった。東宝と共同配給したアニプレックスはイラストカードやスペシャルブックなど映画館の入場者特典を次々に繰り出し、リピーターを呼び込んだ。

 さらにツイッターなどSNSが爆発的な威力を発揮。ツイッターの調査分析サービス「アットクリッピング」によると「鬼滅」関連の投稿は今年1~9月は月間64万~145万件で推移したが、映画が公開された10月は436万件に激増した。

 映画ジャーナリスト、大高宏雄さんは「尋常ではない情報量がインターネットにあふれた。SNSがなかった『千と千尋』の頃とは比べものにならない、巨大な情報の渦が湧き起こった」とみる。

 後追いファン獲得

 興収上位5作中4作はアニメだが、「鬼滅」と他の3作には決定的な違いがある。2位「千と千尋」、4位「アナと雪の女王」、5位「君の名は。」はオリジナル映画として製作されたのに対し、「鬼滅」は原作の一部の映像化。テレビアニメとして制作され、ネットフリックスなど動画配信でも流された全26話の続きという位置付けだ。

 データ・デジタルマーケティングを行う「GEM Partners」の梅津文最高経営責任者(CEO)は「メディアを選ばず、あらゆる方向に広げていく(鬼滅)全体の展開があり、その中の一つが映画。そこにこれだけの人が入るという新しいビジネスモデルを示した意義は大きい」と話す。

 特に重要な鍵を握ったのが動画配信。いつでもどこでも何度でも見られるため、「後追い」ファンも取り込み、空前のブームを巻き起こして映画につないだ。東宝の松岡宏泰常務は記者会見で「配信という形でここまで大きくなった。(動画配信との連動は)今後われわれが研究すべき課題なのではないか」と語った。

 「連動の動きはもっと出てくる」と予想するのは日本大芸術学部の古賀太教授(映画史)。「配信と同時に映画館で公開とか、映画館用に別の作品を作るとか、試行錯誤がこれからあって、製作面でも動画配信が映画を生み出す土壌になっていくと思う」と指摘した。

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