中小企業へのエール

検証されないままの「Y2K問題」 コロナ禍に似た側面はないか

 京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一

 早いもので、もうかれこれ20年も前のこと。「2000年問題」「Y2K問題」といって、日本のみならず世界で大騒ぎになったのを覚えているだろうか。当時多数のコンピューターの内部で、日付を扱う際に西暦の下位2桁だけを表示して、上位2桁を省略していることが原因で、西暦2000年を1900年と認識してしまい、1月1日に誤作動が生じる可能性があるといわれた問題である。

 多くのコンピューターがネットワークにつながっている状況下で、国際経済システムが連鎖的に破綻していくのではと恐れられたのであった。時差の関係で、日本から始まり、そして他のアジア、中東 欧州、そして米国と破滅的な連鎖が地球を一周する危険性が喧伝(けんでん)され、まず日本から食い止めるべしという声が強まり、20世紀後半に政府と企業が一丸となってシステムの更新を集中的に行った。

 当時の想定されていた問題では、発電、送電の停止による停電。医療関連機器の機能停止。水道停止による断水。鉄道航空管制などの交通機能の停止。果ては、弾道ミサイルなどの誤発射。銀行や株式市場、通信機能の停止などが恐れられた。

 当時の私は、通商産業省(現経済産業省)のエネルギー関係部局にいて、この問題に対応するため、12月31日から翌日の1月1日まで、庁舎近くのホテルに陣取り、大みそかの除夜の鐘を聞きながら不測の事態に備えていたことを思い出す。

 結果、世界中で何も重大事件は起こらなかった。一部のATM(現金自動預払機)が停止し、バスと電車の乗り継ぎシステムが機能しなかった、などの報告があっただけである。そもそもリスクはなかったにも関わらず、リスクを過大にマスコミも含めて大きく喧伝し、結果IT業界は大きな利益を得ただけだという向きもある。いや、世界的に十分な対策をとったから、大きな事故がなかったのだという人もいる。ただ言えることは、これが終わった後、誰も問題の検証をしなかったということである。

 今回の新型コロナウイルス騒動に似た側面があるのではないだろうか。大事なことは、落ち着いた後で、社会全体のみならず企業ベースでもしっかりと検証をすることが次につながると確信する。

 2020年は年頭からコロナに翻弄され続けた一年であった。コロナ禍でもできる戦い方は、必ずある。ピンチが個人や会社を強くするというのは、ピンチが自分の強みを発見するきっかけになるからだ。

【プロフィル】増山壽一(ますやま・としかず) 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。58歳。

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