渡文明氏死去

評伝 明るさと厳しさで業界牽引    

 石油元売り業界のリーダーとして業界を牽引(けんいん)した渡文明氏が亡くなった。自分を飾らず、底抜けに明るい性格。その人柄は多くの人に愛され、財界の中では決して主流とはいえない業界ながら、経団連の副会長、評議員会議長を務めるなど多くの財界人に頼りにされた。

 一方で、仕事には厳しかった。その厳しさを痛感させられたのは、2005年11月に表面化した帝国石油(現・国際石油開発帝石)と国際石油開発(同)の経営統合だった。帝石は当時、渡氏が会長を務めていた新日本石油(現・ENEOSホールディングス)が16.5%を保有する筆頭株主。しかも渡氏は「石油開発の中核会社が必要」とする再編論者で、帝石を取り込んで中核を担う構想を描いていた。

 その思いを打ち砕いた帝石経営陣に対する怒りは強く、経営統合の発表直後に167億円もの資金を投じて帝石株を買い増し、露骨に影響力を強めようとした。買い増しを発表した日の夜、渡氏が「上流(石油開発)だけでなく、中下流(石油精製、販売)も含めた戦略を問いたい」と厳しい表情で話した姿が忘れられない。

 業界再編では旧新日鉱ホールディングスとの経営統合に導き、常に意識していた業界2位の出光興産との規模の差を広げた。「これで当分は大丈夫」。そう話した渡氏は、いつものように、にっこりと笑っていた。 (フジサンケイビジネスアイ 編集長 高橋俊一)

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