テクノロジー

グリーンな水素、脱炭素の鍵に 製造過程で排出「灰色」と一線

 「グリーンな水素は、脱炭素化のキーテクノロジーの一つだ」-。

 昨年11月16日、「ネットゼロへの競争」と題して開かれたオンラインセミナーで国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のフランチェスコ・ラカメラ事務局長は、こう主張した。

 「グリーンな水素」とは風力や太陽光などの再生可能エネルギーの電力で水を電気分解するなどして作る水素を指す。

 再生エネで水を分解

 英国で気候変動問題を担当するカラナン政務次官も「グリーンな水素は排出ゼロを目指す英国の不可欠な要素だ」と明言。英国の電力会社が、変動する再生可能エネルギーの電力でも効率よくグリーンな水素を生産できる大型の電気分解装置を実用化したことなどを紹介した。

 貯蔵や運搬が容易な水素は、自動車と異なり電動化が難しい航空機の燃料、製鉄や工場での化石燃料に代わるエネルギー源として脱炭素化に欠かせないとされる。

 欧州航空機大手エアバスは昨年、水素を燃料として二酸化炭素(CO2)を出さない旅客機「ZEROe」3機種の概要を発表した。120~200席の大型旅客機は、改良したガスタービンエンジンで水素を燃やして飛び、航続距離は3700キロ以上という。2035年までに実用化する計画だ。

 水素は既にエネルギー源として使われている。だが、ラカメラ事務局長によると、その98%は天然ガスなどを原料とし生産過程でCO2が出るため「灰色の水素」と呼ばれる。このためグリーンな水素への転換が急務だ。

 ドイツは昨年6月に水素戦略を策定。30年に50億ワット、40年に100億ワットなどのグリーン水素製造能力目標を掲げる。再生可能エネルギーの余剰が多い中国も積極的だ。

 官民で水素エネルギー利用に取り組んできた日本も、菅義偉首相がCO2など温室効果ガスの排出量を50年までに実質ゼロにすると宣言し、新たなステージに入る。

 陸海空へ広がる利用

 トヨタ自動車や三井住友フィナンシャルグループなどは昨年、水素エネルギーの利用促進を目指す「水素バリューチェーン推進協議会」を設立した。エネルギーや重工業、商社といった幅広い業界の88社が参加。低炭素社会の実現に向け、水素の需要創出などで連携するとともに、普及への課題をまとめ、2月にも政府に提言する。

 協議会は自動車など輸送機器や、発電分野で水素を活用する具体策に取り組むほか、水素の製造や輸送、貯蔵にかかるコストを削減するための技術開発でも協力する。

 東京都内で昨年開かれた設立イベントに出席した梶山弘志経済産業相は「水素利用の拡大を積極的に推進する担い手として期待する」と述べた。

 一方、水素で走ってCO2を排出せず「究極のエコカー」とされる燃料電池車(FCV)の本格普及への機運も高まりそうだ。

 旗振り役のトヨタ自動車がFCV「MIRAI(ミライ)」の新型を発売。船舶、鉄道への転用や他社への供給も視野に入れており、水素活用が一気に加速する可能性がある。

 トヨタ以外でもホンダが16年3月にFCV「クラリティ フューエルセル」を発売。トヨタ傘下の日野自動車も燃料電池のトラックを開発するなど、水素活用は徐々に広がっている。25年の大阪・関西万博で旅客船としての運航を目指し、岩谷産業や関西電力などが水素を動力源とする船舶の商用化に向けて共同で検討を始める。

 政府も水素エネルギーの活用を国家プロジェクトと位置付けインフラ整備などを後押しする構えで、家庭用燃料電池やFCVの実用化で世界に先駆けて技術を蓄積してきた日本企業にとって好機となりそうだ。

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