果断に行動する人には、「運」も味方する。
「オロナミンCドリンク」で知られる大塚ホールディングスの創業者、大塚正士氏は「人生はパチンコ玉と同じ」と言っていた。チンジャラジャラと当たるか外れるか、運次第という意味である。大塚氏は戦後のインフレによる貨幣価値の急落を積極的にとらえて、「幸運」に変えた。インフレはチャンスだと直感した大塚氏は、小さな工場を手堅く経営していた父親の信用で借金して土地や物資を買いまくった。これが今日の大塚グループになる原資になった。もし戦後のインフレがなかったら、「農協の職員になっていたかも」と大塚氏は笑っていた。
いずれも共通するのは、成功するまで諦めない気概の持ち主という点である。
ユーグレナの出雲充社長は今でこそ、ミドリムシを原料とする栄養食品を製造販売する東証1部上場企業の経営者だが、2005年に創業して3年ばかりは資金繰りにも苦労した。大手企業の協力を得ようと当たったが、相手にされない。やっと取引できた伊藤忠商事は501社目だった。大変な粘り強さだが、本人は「苦しいと思ったことはない。好きでやっていますから」と言っている。
ついでに言えば、みな若かった。コロナ禍を乗り越えるには、世代交代も必要である。
◇
【プロフィル】森一夫(もり・かずお)
ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。