著者は語る

AI保育革命 「福祉×テクノロジー」で人口問題の解決に挑む

 global bridge HOLDINGS社長兼CEO・貞松成氏

 ICTで園児の保育最適化を図る

 千葉県を中心に認可保育所「あい・あい保育園」を73園運営する中で、「保育の個別最適化」を実現したいと考え、「どうすればできるのか」と試行錯誤を続けてきました。

 今はその転換点と感じています。子供の減少と保育園の整備により待機児童問題が解消に向かいつつあり、これまでの「待機児童をただ受け入れる」施設から「未就学児に最適な教育環境を提供する」施設への転換を模索する時期を迎えたからです。

 激化する園児獲得競争、言い換えると園児やその保護者から選ばれる施設になるには質のいい保育を提供するしかない。それは教育であり、一人一人違う子供の才能、適性を伸ばす個別最適化が求められます。そのためにICT(情報通信技術)化を推進し人工知能(AI)を導入すべきであり、あい・あい保育園では積極的に取り入れ、保育のイノベーションを起こしてきました。われわれが実践してきた、こうした革新的取り組みを本書で紹介しています。

 「保育を効率化することは子供を放っておく発想だ」と拒絶反応もあった保育所のICT化ですが、保育士が足りない中では業務負担を減らし生産性向上につながります。保育士でなくてもいい仕事はロボットやシステムに任せられるからです。

 子供が寝ている間、保育士は5分に1度の頻度で息をしているか確認しなければいけないが、保育士にとって精神的・身体的負担は大きい。そこで就寝中は子供の衣服にセンサーを取り付け寝返りや呼吸などを計測しデータ化。保育ロボット「VEVO(ビーボ)」がそのデータを子供の帰り際に保育士に代わって保護者に教える。例えば子供の皮膚温度が通常より高いと翌日には体調を崩しがちとこれまでの収集データから分かるので「気をつけて」と伝えます。

 私が保育事業に進出した当時から今もそうですが、手書きによる「紙文化」が残っています。しかし紙は捨てられたら何も残らない。無限の可能性を秘めた子供の才能の芽を開花させるには日々の観察が欠かせず、それをデータ化し解析・活用することが個別最適化につながります。子供の「将来の見える化」をベテラン保育士の経験と勘に頼るのではなく、AIが手助けする時代はすぐにやってきます。AIの活用こそが、選ばれる保育所になる決め手です。(1500円+税 プレジデント社)

【プロフィル】貞松成

 さだまつ・じょう 早稲田大大学院政治学研究科修了。2007年にglobal bridgeを設立し社長。同年に千葉県で無認可保育園(後に認可保育園に転換)開園を皮切りに、08年にデイサービス(通所介護)を開所し、10年には通所介護と事業所内保育を組み合わせた介護と保育の融合事業を考案。その後ICT事業にも進出。15年global bridgeを分社化し、持ち株会社global bridge HOLDINGSを設立。17年東京証券取引所に上場。39歳。長崎県出身。

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