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AIによる材料特性のリアルタイム予測/ロボットによる微生物の大規模進化実験

 ■AIによる材料特性のリアルタイム予測

 □理化学研究所革新知能統合研究センター データ駆動型生物医科学チーム 研究員・沓掛健太朗

 材料の開発では、材料を作製し、作製した材料を評価し、その評価結果に基づいて次の材料を作製することの繰り返しが基本であり、このサイクルをいかに速く回すかで開発のスピードが決まる。しかし、材料の作製や評価には、時間、費用、人手、装置などさまざまなコストが必要であり、材料開発におけるボトルネックとなっている。基幹半導体材料であるシリコン単結晶インゴットの90%以上の作製に使われるチョクラルスキー法では、結晶中の酸素不純物濃度の分布を得るまでに4日程度を要し、それを測定可能な箇所は少数かつ不連続だという課題があった。

 今回、理研を中心とした共同研究チームは、シリコンの単結晶成長において、過去に作製した結晶成長データ(制御・固定・観測パラメータ)と酸素不純物濃度を、機械学習の一種である「ニューラルネットワーク」を用いて関係づけることで、酸素不純物濃度を高精度に、そして長さ方向に材料全体にわたって連続的に予測することに成功した。さらに、機械学習による高速予測を生かして、結晶成長時におけるシリコン単結晶中の酸素不純物濃度をリアルタイムで予測するシステムを開発した。

 本研究成果は、シリコンの結晶成長に限らずさまざまな材料開発に応用可能であり、材料の開発スピードの大幅な向上、作製中の異常検知、予測特性に基づくリアルタイム制御など、人工知能を活用した革新的な材料プロセスに貢献すると期待できる。

 基幹半導体材料であるシリコン単結晶インゴットの作製において、結晶成長時の結晶成長速度やルツボ回転速度などの「制御パラメータ」、結晶直径、炉内温度などの「観測パラメータ」、カーボンヒーターやカーボンルツボなどの使用回数といった「固定パラメータ」と、結晶評価の「酸素不純物濃度」をデータベースに入れることで関連づけた予測モデルを作成した。その予測モデルに結晶成長データを入力すると、ニューラルネットの高速性により、酸素不純物濃度のリアルタイム予測が可能になる。

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【プロフィル】沓掛健太朗

 くつかけ・けんたろう 東北大学大学院理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)、応用物理学会インフォマティクス応用研究グループ代表。東北大学金属材料研究所助教、名古屋大学未来社会創造機構特任講師などを経て、2018年より現職。

 ■コメント=研究者やエンジニアの知識をどのように機械学習に活かすかが現在の興味

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 ■ロボットによる微生物の大規模進化実験

 □理化学研究所生命機能科学研究センター 多階層生命動態研究チーム チームリーダー・古澤力

 さまざまな抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌の出現が世界的な問題となっている。耐性菌の対策には、耐性菌が突然変異などにより薬剤に適応した病原菌が選択されるダーウィン進化によって出現することから、その進化メカニズムを理解する必要がある。

 それには「進化実験」が有効で、薬剤を添加した環境で微生物を長期に植え継ぎ、遺伝子への突然変異の蓄積と選択を繰り返すことで、進化の過程を実験室で再現する。これにより、対象とする微生物のゲノム配列や遺伝子発現量などが、どのような変化を経て耐性を獲得するか詳しく調べることができる。今回、理研を中心とする研究チームは、独自に開発した「進化実験ロボット」を使用して、微生物を長期に培養し薬剤耐性進化の過程をハイスループットに解析できる仕組みを構築した。それを用いて、微生物の一種である大腸菌をさまざまな薬剤を添加した環境で進化させ、その遺伝子発現量やゲノム配列変化などのデータから機械学習により、薬剤耐性進化を特徴づける状態量の抽出に成功した。その解析から、さまざまに異なる薬剤に対する進化が少数の状態量で説明できることが示され、薬剤耐性進化に対する拘束条件が明らかになった。

 本研究成果は、抗生物質への耐性獲得を抑制する手法や新しい抗生物質の開発への貢献に加え、微生物進化の予測と制御による工学・農学分野への応用が期待できる。

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【プロフィル】古澤力

 ふるさわ・ちから 2000年、東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。理化学研究所、大阪大学を経て、11年4月から現職。16年から東京大学大学院理学系研究科生物普遍性研究機構教授を兼任。

 ■コメント=理論研究と実験研究を統合し、生物進化を予測し制御をする手法を開発したい。

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 ■中堅・中小企業向け「かなえ共創会員サービス」開始

 理化学研究所の研究成果を新たな事業の創出につなげ社会へ還元することを目指し、理研鼎業(りけんていぎょう)は、研究開発型の中堅・中小企業を対象に、企業の現在の課題から未来の課題の解決に役立つサービスを提供する「かなえ共創会員」をスタートした。「技術相談」「セミナー・交流会」「ワークショップ」を通じて企業に有益な情報を提供する。9月30日まで会費無料で会員制度を試すことが可能。

 かなえ共創会員サービス第2弾では、「日本のものづくりの未来を考える」と題したワークショップを開催する。様々な分野の産業連携スキルを持つコーディネーターとのグループワークや、各社の強みや課題の分析を通じて新たなビジネス可能性の検討を行う。先着20人の事前申込制。

 〇2月5日(金)第1回理研イノベーションワークショップ「日本のものづくりの未来を考える」

 基調講演 山形 豊チームリーダー(理化学研究所 光量子工学研究センター 技術基盤支援チーム)

 場所・早稲田大学日本橋キャンパス 東京都中央区日本橋1-4-1 日本橋一丁目三井ビルディング5階(COREDO 日本橋)

 ○申し込みなど詳細は、理研鼎業ホームページ(https://www.innovation-riken.jp/)

 ※延期の場合もあるため、最新情報はHPでご確認ください。

 ○問い合わせ 株式会社理研鼎業 かなえ共創会員事務局

 電話048・235・9308 E-mail:kanae@innovation-riken.jp

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