高論卓説

テレワークで変わる働き方と企業意識 さらに求められる“従業員ファースト”

 新型コロナウイルスの猛威は2021年に突入するとさらに増し、緊急事態宣言が東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に再び発出され、飲食店への時短営業や外出自粛、テレワークの推進などが要請された。さらに13日には大阪、京都の2府と栃木、岐阜、愛知、兵庫の4県も対象に加えられた。コロナ禍で「リモートワーク」や「ハイブリッドワーク」が急速に拡大し、日本人の働き方は今、大きく変わろうとしている。

 「リモートワークをすることが強く求められるようになり、自宅にいる時間が増え、本業だけに依存する生活に不安を持つ人が増えている。このような中、ネットを使った副業が増えている。副業で稼げるようになれば、これまでの仕事を辞めて本業にする人も出てくる」

 個人の経験やスキルを売買するマーケットプレイスのココナラの南章行会長はこう語る。

 一方、会社でもこれまでの常識が通用しなくなり、大きな変化が生まれ始めているという。若手社員の間からは次のような声が聞こえる。

 「リモートワークが普及するにつれ、会議などでも上司の目や周りの雰囲気を気にしなくて済むようになった」「会社では上司や仲間との人間関係が仕事をするモチベーションにつながっていたが、リモートが普及してからは仕事そのもので判断したり、会社のビジョンで決めたりする人が増えている」

 しかし、リモートワークやハイブリッドワークにも多くの問題が山積しており、会社は新しい対応が求められているという。

 「リモートワークがはじまったことによって、働きすぎる人とさぼる人が出てきた。管理職はこれまでのような1日8時間という労務管理が難しくなり、スケジュール管理や部下の能力をどう評価するかということが非常に難しくなっている」(50代国家公務員幹部)。

 それだけではない。OJT(職場内訓練)がやりにくくなり、社員の学習格差も拡大しているという。

 「会社にいれば横でやっている先輩のやり方を盗むことができるが、オンラインではできない。自分で学ぶということをちゃんとやれるかどうかで差が付く。それにメンタル面。自由な働き方になってきて、家族と過ごす時間も増えてハッピーだという人もいれば、一人の時間が耐えきれないという人もいる」(50代会社役員)。

 これは一過性の問題ではない。むしろコロナ禍で終身雇用制への幻想は崩壊し、実力があると思えばどんどん独立していく。一方で今は一時的に失業率が増加しているが人口減少による労働力不足は依然解消していない。では企業は今後どうすればいいのか。

 「会社側は今まで以上に従業員ファーストを打ち出せるかどうかが重要。リモートワークなどを通し自由を経験した従業員からそれを奪うやり方はエンゲージメント(企業と従業員の信頼関係)を下げてしまう。従業員のためにやっているというところが採用力、ロイヤルティーの向上につながっていく。さらに従業員の健康に配慮した経営が求められる。ファッション感覚でしかなかったSDGs(持続可能な開発目標)が加速され、経営者のマインドは変わっていくのではないか」(南氏)。

 会社が優秀な人材を維持獲得するのは難しい時代になったようだ。

 松崎隆司(まつざき・たかし) 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『ロッテを創った男 重光武雄論』など多数。埼玉県出身。

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