--社長に就任して半年間の振り返りは
「就任時から新型コロナウイルス禍だったので、会社の体質を変えなければいけないと考え、比較的短期間で事業構造改革と新ビジョンを発表した。社員全員がコロナ危機で航空機などのマーケットが一瞬にして変わることを体験し、経営判断はスピーディーにやらなければいけないという認識を共有した」
--PCR検査ロボットシステムの開発状況は
「データの精度の検証をしており、国や医学会ともやり取りしているところだ。非常に注目されているので、きちんと安心してもらいながら、数も増やして早く検査するということを実現していく」
--昨年末には国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」による初手術が成功した
「多くの病院から引き合いがあり、期待度は大変高い。私自身ロボット事業に携わったときから医療で社会に貢献できると思っていたし、やりたかったことだった。医療以外でも、ロボットとバイク、ヘリコプターの技術が一つになった新しい物流ソリューションの開発などに取り組んでいる。こういう社会から求められる目的があると、部門を越え一緒に仕事ができる」
--組織の縦割りの壁は壊せているか
「社長直轄の組織をつくり、全部門から提案を求めると『やりたい』という人たちがたくさん出てくる。これからも上下関係の壁を少なくし、社内カンパニー間の壁もなくしていく。年齢などに関係なく対等な議論ができないと新しいものは生み出せない」
--4月に船舶海洋、プラント両事業が統合する
「船舶は非常に厳しい環境にあるが、今後、水素社会を実現するには巨大なタンクを持った液化水素船が必要になる。開発中の水素船だけでなく、ありとあらゆる関連技術を統合し、投資もそちらに向けていく」
--10月には二輪車と鉄道車両の事業が分社化する
「二輪はライダーの中心が50、60代で、業界全体で将来のあるべき姿を考えないといけなくなっており、分社化で動きやすくする。鉄道車両は受注環境はそんなに悪くないが、いろんなメーカーが連携して取り組むことが大事な時代を迎えている。両事業とも川崎重工のグリップを大事にしながらも、より迅速に世の中のニーズに応えられるよう業界内で連携していく」
--航空機事業での配置転換の進捗(しんちょく)は
「幸いロボットや二輪などフル生産に近い事業もあり、そういうところに異動してもらっている。航空機は今が一番底だろうが、無人ヘリなど新しいことに挑戦できるチャンスをもらったと前向きにとらえたい」
【プロフィル】橋本康彦 はしもと・やすひこ 東大工卒。1981年川崎重工業入社。ロボットビジネスセンター長、常務、副社長などを歴任し、2020年6月から現職。兵庫県出身。