2021 成長への展望

みずほ証券社長・飯田浩一さん ESG投融資が加速、脱炭素に商機

 --新型コロナウイルス禍の債券ビジネスへの影響は

 「投資家がリスクを取ることに積極的で、余剰資金の運用先として社債市場は活況だ。社会貢献債などのSDGs債の発行も増えている。昨年10月には東大が国立大として初めて償還期間40年の大学債を出した。コロナ禍で財政が発動される中、独立法人として民間資金を活用して自立度を高めようとする動きに対し、証券会社として画期的な仕事ができた」

 --菅義偉政権が脱炭素の方針を打ち出した

 「(企業の環境問題への取り組みなどを投資判断の材料にする)ESG投融資の流れが加速するだろう。長期的な時間軸を定めた上で、企業も脱炭素に向けた投資活動をし、投資家もそれを応援する時代の転換点になる。資本市場の役割は非常に増しておりビジネスチャンスがあると受け止めている」

 --コロナ禍で個人営業の現場も変わった

 「対面と非対面を融合した営業を強化した。コロナ禍でも、顧客との信頼関係をどう築くかという営業の原点は変わりない。一人一人の営業力をレベルアップするため、優秀な営業員が顧客に対してどういう動きをしているかデータ分析し、社員に共有している」

 --富裕層向けの営業を強化してきた

 「顧客との信頼関係を強化する。富裕層にもいろいろなタイプがいる。ニーズに応じてみずほフィナンシャルグループ全体で取り組む。例えば未上場企業などに投資するバイアウトファンドへの投資を小口分割して関心のある富裕層に案内している。上場株式や債券など伝統的資産以外のオルタナティブ(代替)投資ができるように、メニューを広げていく」

 --手数料の考え方は

 「預かり資産残高に応じた手数料体系に移行する可能性も研究・検討している。顧客のニーズは一律ではない。どういう付加価値に対して対価をいただくか、見つめ直している。顧客の人生や家族全体を見て総合的に資産運用の手伝いをする考え方が大事だ」

 --同じグループの銀行と証券会社で顧客情報の共有を禁じるファイアウオール規制が緩和される方向だ

 「金融庁が正面から取り上げ活発に議論していただいていることを前向きに受け止めている。銀行員でも資本市場を理解し、証券マンでもモノの決済、商流を理解し、継ぎ目なく商品やサービスを提案できるようになれば、顧客企業の成長に結びつく。銀証両方に触れる金融人材の裾野が広がれば、日本の金融力の向上にもつながる」

【プロフィル】飯田浩一 いいだ・こういち 慶大経卒。1986年日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)。みずほフィナンシャルグループの取締役兼執行役常務などを経て、2018年4月から現職。東京都出身。

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