新型コロナウイルス感染拡大で大手外食チェーンの苦境が、日本フードサービス協会が25日公表した2020年の市場動向調査で示された。昨春の緊急事態宣言以降、繁華街の店舗や夕夜間の店内飲食の割合が高い業態ほど壊滅的な影響を受け、資金繰りも厳しさを増す。各社は「イエナカ需要」の取り込みや新業態を展開し、苦境を乗り越えようとしている。
外食チェーン各社は社会の要請に応じることを基本に、時短営業や店内飲食の安全確保の仕切り板の設置などに取り組み、少人数対応など新メニュー開発で生き残りをかけている。だが外食が感染拡大源とされる中で、店内飲食中心の業態では、多くが客足を戻すこともできないのが実態だ。
中でも、アルコールと食事を夕夜間に提供する居酒屋業態では、不採算店閉店や事業転換が相次ぐ。ワタミは祖業の居酒屋の新規出店を止め、“成長産業”とされる焼き肉業態への転換加速を決めた。「白木屋」「魚民」など居酒屋チェーン大手のモンテローザも今年1月、緊急事態宣言の再発令を受け、東京都内の全店の2割弱にあたる61店を順次、閉店すると発表した。
外食自粛による市場変化に対応すべく、店舗整理に加え、新規事業の展開に注力する動きも出ている。コロナ禍前から宅配強化を進めていたすかいらーくホールディングス(HD)は昨年7月、から揚げ専門店「から好し」をファミリーレストラン「ガスト」の店舗に併設させる戦略を開始し、今年1月に600店へ拡大した。店内でも食べられるが、狙いは宅配・持ち帰り需要への提案で、3月末までにガスト全店の8割を超える1100店に引き上げる。
ロイヤルHDは冷凍食品事業を拡充中だ。内食市場への進出の足掛かりとして19年12月に家庭用冷凍食品「ロイヤルデリ」を開始。自社ネット通販とファミレス「ロイヤルホスト」で販売するが、直後のコロナ禍で需要が高まり、20年10~12月は同年1~3月と比べ6.6倍に伸長した。
回転すしチェーン大手のくら寿司は今月、東京の繁華街、渋谷と新宿に新店を開業した。社内では都心型店舗と位置付け、メニュー価格は自社他店より10円高い「1皿110円」。値上げは家賃が高いためだが、コロナ禍で飲食店が撤退した空き物件も増えて賃料交渉がしやすくなり、出店の後押しとなった。今年10月末までに合計6店の都心型店舗出店を計画している。(日野稚子)