--新型コロナウイルス禍は昨年来、経済に大きな影響を与えている
「マイナスとプラスの影響が両方あった。当社の事業ではホテル、商業施設、空港運営は苦しい状況になった。一方、以前は都心部や湾岸エリアのタワーマンションに人気が集中していたマンション住宅市場では、緑豊かな郊外のファミリータイプが息を吹き返すなどプラスの側面もあった。商業施設についても、アウトレットモールは、日本の人たちが海外旅行をできない分、家族で買い物しに足を運んでいただき、回復基調にある」
--大手町、丸の内、有楽町の今後の街づくりは
「スマートシティーという観点でいうと、特に『大丸有地域』にはメリットがある。この地域は民間所有の敷地が多いが、まちづくり協議会などが協力して有効活用を図っている。道路利用では、道路に面する建物の所有者たちが複数いても協力関係ができているので、警察などの関係当局とも連携しながら先進的な取り組みを進めやすい」
--どんな活用事例があるか
「昨年夏、丸の内仲通りで『丸の内ストリートパーク』を展開した。通りに芝生を敷き、無料Wi-Fiや電源を完備し屋外で仕事ができる環境をつくった。完全に自動車を締め出す道路占用の許可が必要なので、7~9月の期間限定だったが非常に好評だった」
--東京が国際金融センターとして世界に評価されるためには何が必要か
「金融はキャッシュレス化を含め従来とは違う流れができつつある。大手町では、スタートアップや大手企業が集まるフィンテック拠点「FINOLAB(フィノラボ)」を共同運営しているが、新しい潮流を感じられる魅力がないと金融センターにはなりえない。だからこそ中国としっかり立ち向かっていかなければならない。日本は生活がしやすく、監視が強すぎない心地よさもあり、欧米人には受けるだろう。しかし、徐々に中国の力が増してくると、コントロールされた社会の方が合理的だとみる世界観になってもおかしくない流れが少しずつ来ていると感じる。そうした世界情勢の中でどうすべきかを見極めていかなければならない」
--2021年はどんな年に
「新型コロナのさらなる感染拡大をしっかり防ぎながら経済も回していくことを徹底すべきで、国にはその流れを作ってもらいたい。東京五輪を開催し日本がよくがんばったといわれるような年になればと思う」
【プロフィル】吉田淳一
よしだ・じゅんいち 東大法卒。1982年、三菱地所入社。常務執行役員を経て、2016年6月取締役兼執行役常務。2017年4月から現職。福岡県出身