2021 成長への展望

アサヒグループホールディングス社長・小路明善さん 世界規模でブランド価値向上

  --2020年を振り返って、コロナの影響は

 「グループCEO(最高経営責任者)として、新型コロナ環境下で2つ学んだ。1つ目はボーイスカウトで『備えよ常に』との言葉がある。有事や大きな変化があったときに対応できるよう、備える対応をしないといけないという意味だ。この点ができていなかった。経営資源の『人、モノ、金、情報』のうち今回は(コロナ禍で)人の動きが止まったが、酒類・飲料・食品の各事業でどういうダメージが起き、どこでカバーするのか。こうしたリスクシナリオとクライシスマネジメントが十分ではなかったということだ」

 「2つ目は意思決定のスピード化と最適化がうまくいかなかった。例えば、コロナ禍でお酒は家飲み消費が増え、多様化と多価値化が進んだ。しかし『スーパードライ』の缶商品販売数量は年間累計前年比5%減で、(酒税改正でビール減税後の)12月は3%増。ニーズに対応した提案を早く踏み込んで展開できていれば需要は増えたはず。飲料、食品でも散見された」

 --2つの学びから21年の展開は

 「新型コロナについて、春に先進国にワクチンが広まる前提での専門家の予測分析では、22年半ばにはニューノーマルが定着し、19年並みの経済成長率に戻る。そして21年は新しい生活様式への移行期と捉えている。国内外食市場は飲食店の閉店・廃業も出ており、市場規模は元に戻らない。リモートワークの定着も一因になる。『イエナカ消費』がさらに活発化する一方、国内観光が戻って観光地でのアルコール消費は増えるとみている。新時代に向け、変化にスピーディーに対応できるかが非常に重要だ」

 「グループ全体ではビール事業は豪州での事業買収も終わり、日本・欧州・豪州のグローバルプラットフォームが立ち上がった。事業価値向上のため、グローバルブランディングをいかに構築するかに取り組む。飲料についても、国内、東南アジア、豪州で健康飲料分野を伸長させる。ペットボトルの環境問題対応もスピード感を持って進めていく」

 --アサヒビールは東京五輪・パラリンピックのゴールドパートナーだ。開催についてどう考える

 「今、コロナ禍で生活が萎縮せざるを得ない状況だが、五輪での選手の活躍をテレビで見るだけでも(心持ちが)違ってくると思う。ソーシャルディスタンスなど対策を万全にして、今の生活に対して次の希望の光を与える大会にしていかないといけない。昔の東京五輪もそう、希望の光、感動を与えた。私は開催をしていくべきだと思う」

                   ◇

【プロフィル】小路明善

 こうじ・あきよし 青山学院大法卒。1975年アサヒビール入社。アサヒ飲料専務取締役、アサヒビール社長などを経て、2016年3月から現職。長野県出身。

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