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IT新法施行、透明性高め中小出店者保護 楽天やヤフー対応急ぐ

 巨大IT企業に契約条件の開示などを義務付ける新法が1日、施行された。情報開示をてこに出店者との取引の公平性や透明性を高めるよう自主改善を促す内容で、対象になる楽天やヤフーなどは対応を急いでいる。日進月歩のデジタル分野で公正な競争環境を確保するためには今後も実態に応じた規制見直しが必須であり、技術革新を阻害しないようバランスをどう取るかも課題となる。

 「事業のスピードをそがれることがないよう準備万端に備えたい」。楽天で主力のインターネット通販事業を担当する野原彰人執行役員は新法施行を間近に控えてこう語った。

 新法は年間売上高3000億円以上のオンラインモールと同2000億円以上のアプリストアの運営会社が対象で楽天やヤフーのほか、アマゾン・コム、グーグル、アップルに適用される。出店者との契約条件の開示や契約変更の際の事前通知などを義務付け、経済産業相への毎年度の取り組み状況などの報告を求める。守れない場合は社名公表や改善命令などの行政処分を科す。

 「まず透明化に着手したのは評価できるが、ルール整備の一里塚にすぎない」とニッセイ基礎研究所の松沢登保険研究部研究理事は指摘する。新法の狙いは政府が巨大ITの取引状況などの実態を把握し、対話を通じて継続的に改善を促せるようにする点にある。

 対象企業も対応に動き出している。楽天は政府からの要請に対応するための組織「コマース渉外室」を2月に設置するほか、3月には出店者と意見交換をする委員会も新設する。ヤフーは昨年12月までにネット通販サイトへの出店希望者の審査基準や検索結果の表示順位の決め方を公開するなど、新法施行に先駆けて情報開示を推進している。

 巨大IT企業への規制の流れは世界の潮流だ。販路を巨大ITのプラットフォームに依存する中小の出店者は弱い立場になりやすく、不利な契約を強いられると問題視されているからだ。先頭を走るEU(欧州連合)では昨年7月に全てのプラットフォーム事業者に情報開示を求める規制を施行。同12月には巨大ITに禁止行為規制や高額の制裁金などの罰則を科す新法案を公表した。米国でも同10月に下院で市場を支配するGAFAの分割を提言した報告書が公表された。

 国際的な規制の流れに「それだけ作業が増えるし、一民間企業として法律での制限は避けたい」と楽天の野原氏は本音を漏らす。日本の新法は検討過程で具体的な禁止行為を規定することも議論されたが、厳しすぎてビジネスやイノベーションを損ねるとして見送られた。だが、バランスに配慮した分、規制の実効性を疑問視する声も上がる。経産省の担当者は「実際に運用しながら実効性を検証する。政府がしっかりレビューする」と強調した。(万福博之)

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