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スポーツ興行、コロナ禍で獲得したい「サテライト・ファン」

 新型コロナウイルス禍が海外スポーツビジネスへ与えた影響に関する記事や論文を調べていたら、「Satellite Fan(サテライト・ファン)」という言葉が目に入った。何のことかというと、衛星放送を代表とする国際スポーツ映像配信により本国外に生じたファン層のことを指す。(GBL研究所理事・宮田正樹)

 ブランド資産を保有

 アメリカの四大メジャースポーツリーグ(NFL、MLB、NBA、NHL)のチームや選手、欧州サッカーの強豪リーグ、チーム、選手たちは、他国においてもファンを獲得し、リーグやチームにとって海外マーケティングが重要な経営戦略となってきている。対戦型団体スポーツにおいて、他国でファンを獲得していくにはリーグやチームが相当のブランド資産を保有していることが必要である。一般に「ブランド資産(ブランド・エクイティー)」とは4つで構成されているといわれている。(1)ブランドへの忠誠心(2)ブランドの認知度(3)ブランドに感じる品質(4)ブランドイメージ-などだ。

 そして、ブランドとして国際的な顧客吸引力となり得るものをリーグスポーツの各チームの構成資産の中に探していくと次のようなものがその候補である。成績、スター選手、リーグの国際的な位置付け、スタジアムやアリーナの景観・文化的な価値、スポンサー企業の知名度やブランド価値、所在都市の知名度。

 海外の事例を追ってこのような考察を進めながら、「果たして日本のリーグスポーツはサテライト・ファンを獲得できるだろうか」と考えたとき、明るい展望が描けないのが正直なところであった。ところが、「台湾ではコロナの影響でNBAの放送が中止となっていた時期、NBAの代わりにアニメ『スラムダンク』を毎晩ゴールデンタイムに放送していた」という記事を見て、思い当たったのが「アニメ」であった。

 アニメとのコラボ

 ご承知の方も多いと思うが、少年サッカー漫画の金字塔「キャプテン翼」はそのアニメが世界中で放映され、受け入れられ、ファンを獲得した。海外サッカー選手にも影響を受けた人は多いという。「スラムダンク」は、米国においてはあまり受けなかったようだが、中国はじめアジア諸国では熱狂的に受け入れられた。

 日本のお家芸であるアニメの国際的な評価をベースとすれば、名作に依拠しなくとも海外に通じるスポーツコンテンツを生み出せるのではないだろうか。それも「巨人の星」や「あぶさん」のように実在のプロリーグを舞台としたドラマとして作成してはじめてスポーツコンテンツとしての意義がある。

 巨人の星はインドにおいてクリケットの話に変更され放映されたことは話題となったが、ヒットしたとは聞かない。しかし、インドでは成功しなかったが、巨人の星のように実在のプロを舞台としたアニメ作品を作ることにより、日本のプロスポーツにもフォーカスが当たることが期待される。

 ライブコンテンツとしての価値が重要視されているスポーツとしては邪道かもしれないが、リーグスポーツとアニメとのコラボレーションは、それがビデオゲームへ発展する可能性を含め、サテライト・ファン獲得の手段として日本独自のツールとなり得るのではなかろうか。

 プロリーグを舞台とするアニメ作品を制作するには、選手の肖像権の処理など、リーグや球団の協力が必要である。そうであるだけにリーグを挙げてのプロジェクトとして取り組む意味と価値があるのだ。

 コロナ禍による興行的ダメージが続きそうな環境下において「思いついた」ことではあるが、これに挑戦してくれる作家、出版社、リーグ、そして配信会社はいないものだろうか。

【プロフィル】宮田正樹 みやた・まさき 阪大法卒。1971年伊藤忠商事入社。2000年日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年から現職。二松学舎大学大学院(企業法務)と帝京大学(スポーツ法)で非常勤講師を務めた。

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