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転換期迎える二輪メーカー、各社で知恵しぼる「電動化と走る楽しみの両立」

 【経済インサイド】

 日本の二輪メーカーが転換期を迎えている。新興国市場では地場メーカーと競合し、先進国では成熟した市場環境の中で構造改革を進めながら、新型コロナウイルスとの戦いが続く。コロナ禍でも密を避け、安心して移動できる乗り物として二輪車を評価する動きもある一方、脱炭素化へ進む時代の潮流への対応も迫られている。

 二輪世界最大手のホンダは1月6日、世界最大市場・インド北部ハリヤナ州の工場の正規従業員を対象に希望退職を募集すると発表した。

 背景にあるのは販売不振だ。もともとインド市場は地場メーカーとの競争が激しい。昨年からは排ガス規制が強化され、コロナ禍が追い打ちをかけた。インド自動車工業会によると、ホンダの昨年4~12月の二輪販売は前年同期比30%減の約264万台に落ち込んだ。

 ホンダは二輪事業で開発・生産、部品の共有化などで効率化を進め、令和2年3月期の二輪の営業利益は四輪の約2倍の2856億円を計上。売上高営業利益率も13・9%で、四輪の1・5%を大きく上回った。

 四輪ではインドを含む世界各地で余剰な生産能力の削減を進めていた。今回の希望退職の募集でリストラの波が二輪にも及んだ。

 ホンダ、ヒーロー・モトコープ(インド)に続く世界3位のヤマハ発動機はコロナ禍以前から先進国市場で赤字が続き、元年12月期は142億円の営業赤字を計上。イタリアのバイク用エンジン製造子会社の売却で年間約20億円の収益改善を見込む。

 先進国の二輪市場は成熟し、趣味で走りを楽しむ中大型バイクが中心だ。

 日本ではピーク時の1980年代には300万台超あったが、移動に便利な軽自動車や電動アシスト付き自転車の普及で、ピーク時の1割程度にまで減少。新車購入者の高齢化も進み、利益を生み出すのは容易ではない。

 こうした状況を受け、川崎重工業は今年10月をめどに二輪事業を分社化することを決めた。迅速に意思決定ができるようにし、消費者に密着した製品・サービスの提供や業界内での連携加速につなげるのが狙いだ。

 一方、二輪メーカーでは船や船外機などのマリン事業が成長している。スズキは平成11年から始まったタイ工場の船外機の生産が累計100万台を達成した。

 ヤマハ発も、マリン事業が売上高構成比で約2割を占める。半導体製造装置などのロボティクス事業も好調で、工場内で近くに人間がいてもけがをさせないよう安全に配慮した協働ロボットの開発も進める。

 ただ、コロナ禍で二輪事業の前途が暗いというわけでもない。ヤマハ発の日高祥博社長は「密を回避するため、二輪車でパーソナルな移動をし、近場でアウトドアを楽しむ傾向もある」と指摘する。

 移動が増えれば、安全性能がより求められる。ヤマハ発が新規需要開拓の起爆剤として期待するのが前二輪、後一輪の三輪バイク「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)」だ。二輪免許で運転でき、車体を傾けてカーブしても転びにくいのが強みだ。

 昨年9月には「トリシティ300」を発売。停車時や車両を押し歩く際に倒れにくくする自立支援機能を搭載した。

 日高社長は「二輪車に興味がなかった消費者にアピールできる商品を目指す」とLMWに期待する。

 二輪車は四輪車と比べて二酸化炭素(CO2)排出量が全体として少ないが、2035(令和17)年までに新車販売で電動車100%を実現する政府目標の対象に含まれるかが注目されている。

 大容量の電池はコストがかかるうえ、車両の重量化にもつながる。大型バイクの電動化には「高価格で、重い商品が果たして買ってもらえるか疑問だ」(日高社長)との声もある。

 電動化と走る楽しみの両立には、各社とも知恵をしぼることになりそうだ。(宇野貴文)

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