新型コロナウイルスのワクチン接種開始に向け、企業が接種会場の設営や輸送・保管などへの参入を加速させている。大阪・南港では3日、大型テントを使った接種会場のデモンストレーションが始まり、パナソニックはマイナス70度の状態を長期間保持できる保冷容器を開発。安全で円滑な動線やワクチンの温度管理など多くの懸念に応えることで、コロナ禍を商機に変える狙いだ。(田村慶子、山本考志)
総合レンタル業の西尾レントオールは大阪市住之江区の社有地にテントの接種会場を開設。問診や接種のブース、副作用を見る観察所などを設置し、3日から18日まで医療機関や自治体向けに公開する。2月中旬にも医療従事者からワクチン接種が始まる見通しだが、会場の間取りや設備などが決まっている自治体はなく、同社は提案を契約につなげたい考えだ。
担当者は「テントなら空き地にすぐ設置でき、廃校の運動場などを使えればという声もある」と説明。実施主体となる10以上の自治体が視察する予定という。
ダスキンも接種会場の提案を強化。音楽イベントの会場など向けに昨年10月に始めた衛生サービス事業のノウハウを生かし、体育館や公民館を想定した会場設営をプラン化した。
ワクチンには米ファイザー製など超低温での輸送・保管が必要なものもあり、温度管理が最大の課題だ。パナソニックはドライアイスなどの保冷剤を使い、真空断熱でマイナス70度の状態を最長18日間保持できる保冷容器を開発した。冷蔵庫の省エネルギー性能を高める独自の断熱加工技術を応用。今年度末から製薬会社などにサンプルを提供し早期の商品化を目指す。
マイナス20度前後で保管が必要な米モデルナ製に対応する冷凍庫は、家電メーカーのツインバード工業(新潟県)が生産。ワクチン供給を担う武田薬品工業に5千台を納入する契約を結んだ。シャープはスギヤマゲン(東京)と共同で、液晶パネルの温度管理技術を使った製品を販売する。
一方、日東電工は平成23年に買収した米企業が展開する遺伝子の発現に直接作用する「核酸医薬」について、コロナの治療薬やワクチンの研究開発向けに製薬企業などから引き合いが増え、受託製造を拡大。同社の伊勢山恭弘経理財務本部長は「コロナ禍でも業績を伸ばせる戦い方ができる」と自信を見せている。