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小さな飲食店守る「先払いアプリ」 行政と地元企業がタッグで支援

 新型コロナウイルス感染拡大で苦境にあえぐ飲食店を支援しようと、大阪府柏原市が地元の印刷会社と先払いアプリを共同開発し、サービスの運用を始めた。昨春に緊急事態宣言が発令されて以降、各地で飲食店の支援が行われているが、自治体が独自にアプリを開発、リリースするのは全国的にも珍しいという。(大島直之)

 さまざまなメリット

 柏原市民文化会館リビエールホール1階の「喫茶ベリー」ではこの冬、定食やコーヒー代をスマートフォンを見せて支払う客が増えている。

 同店は昨年11月中旬、市が開発した決済機能付きアプリ「KashiMo(カシモ)」を導入。事前に現金をチャージするキャッシュレス決済やクレジットカード払いとは違い、代金を先払いしてもらえるメリットがある。店長の寺田真弥さんは「効果は半信半疑だったが、新規顧客が予想以上に増えた。先払いで応援してくれるのはありがたい」と笑顔を見せる。

 市内の飲食店40店で利用できる千円、3千円、5千円、1万円の先払いチケットを販売。今月末までは、1店舗につき3万円を上限にチケット代の10%が還元されるキャンペーンも実施中だ。

 カシモの場合、店が負担する手数料はチケット代金の3・6%で、10%の手数料がかかることもある大手のグルメ予約サイトや事前決済サービスに比べて割安の上、新たな端末の導入も不要。さらに予約機能を省くなどして低コスト化を実現した。

 また、月末までのチケット代金が翌月10日に振り込まれることから、キャッシュレス決済やクレジットカード払いよりも早く代金回収ができ、小規模な店にとっては資金繰りの面でも安心感がある。

 さらなる機能充実を

 柏原市は昨年6月、より効果的な飲食店支援策を打ち出そうと、委託開発事業を公募。審査を経て、地元印刷会社の古賀印刷(古賀博社長)が開発を担当することになった。

 市は昨夏、地元飲食店を支援するキャンペーン「#柏原エール飯」を実施。この際、ポスター印刷を手掛けた同社の古賀謙亮さんは「なじみの飲食店を応援したいという需要はあるはず」と考え、カシモを提案したという。

 ただ、商業印刷や広告デザインを主力とする同社にとって、アプリ開発は初めての経験。新たな分野への挑戦を決めた背景には、コロナ禍でチラシや広告などの受注が激減するなか、将来への期待を見いだそうという事情もあった。

 今回の試みを通し、飲食店の営業先と接点が生まれたのが副産物の一つ。アプリ事業が軌道に乗れば、印刷物の顧客基盤を活用できるほか、アプリを商材とした新事業を展開する可能性も膨らむ。

 市もカシモの立ち上げを機に、アプリを活用した行政サービスなどの情報発信機能の充実を図ろうとしている。当面は飲食店向けの先払いサービスを運用しながら、災害▽医療・福祉▽教育-など他分野にも広げていく考えだ。市産業振興課の担当者は「地域企業育成やアプリの拡張性を見据え、開発に踏み切った。今後もアプリを充実させていきたい」と話している。

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