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「Go To」事業再開に備え 宿泊施設へ求められる新施策

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」の停止が来月7日まで延長されたことで、8日の再開に期待していた全国の宿泊施設からは落胆の声が相次いだ。ただ、各事業者は感染対策強化のための設備更新などトラベル再開に備えて必死に前を向く。政府は観光事業者向けの新たな支援策を週内にも発表する見通しだが、各事業者は新型コロナウイルス禍で生き残りを模索している。

 「トラベル事業の停止で週末や土日に来ていたお客の流れがガラッと変わった」。都内の外資系高級ホテルの関係者はこう嘆く。今週末も全室の15%程度の予約しか入っておらず、光熱費を抑えるために稼働率の低いフロアを使用しないようにするなど、コスト削減を重視する。

 仙台市の温泉街、秋保温泉でも、トラベル事業の停止で宿泊客が激減したため、旅館の半数が休館している。「開店してもなかなかお客に来てもらえない。週末だけ営業する旅館も多くなっている」(旅館経営者)。

 外資系ホテルは新型コロナ前は訪日客の割合が高かったが、現在では1割程度。訪日客の本格回復は数年先と見込まれているため「トラベル事業の再開による国内利用者が頼みだ」(関係者)と話す。ただ、日中に仕事をする人向けの新プランを提供するなど、一定の需要を期待した施策は打ち出している。

 宮崎市の大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」を運営するフェニックスリゾートも、新型コロナ前は訪日客誘致に注力してきたが、コロナ禍の今は地元向けに方針転換。九州在住者向けのプランを提供するなど、感染が比較的少ない地域からの利用者を着実に取り込む考えだ。

 赤羽一嘉国土交通相は、宿泊施設などへの新たな支援策を検討する。具体策の発表は今週の見通しだが、「トラベル事業の停止中に新型コロナの感染防止の強化に取り組む事業者を支援する仕組みを創設する」としている。

 ただ、既に大半の宿泊施設では感染対策を整備しているため、事業者からは「旅行者が万が一、新型コロナに感染した場合にすぐに対応できる仕組みなど、安心して旅行できる施策が必要だ」などの声が聞かれている。

 トラベル事業についても、早期の再開に期待する一方で、懸念される事業終了後の宿泊客の落ち込みを緩和する措置を求める声も上がっており、新たな支援策とともにトラベル事業の改善も必要となりそうだ。(大坪玲央、岡田美月)

 観光事業者支援をめぐる政府の対応

 ・Go To トラベル事業の全国一時停止。国土交通省として観光事業者への新たな支援策を検討

 ・観光業を含む事業者への一時金の上限を拡大

  中堅・中小企業 40万円→最大60万円

  個人事業主   20万円→最大30万円

 ・雇用調整助成金や実質無利子無担保融資などの既存の支援制度の活用を呼び掛け

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