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日本のスポーツ界、組織はどうあるべきか 「森発言」奇貨として女性参画推進を

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 あの「女性蔑視」発言から1週間、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長への批判が止まらない。発言の翌日、森氏は謝罪、撤回したが、逆に事の本質への理解不足を露呈。世論の反発を招いた。

 森氏の2020大会や2019ラグビーワールドカップ(W杯)への献身、貢献は多くの人が知る。また日本ラグビー協会会長時代、女性理事登用を主唱した人でもある。

 私も委員を務めた2020大会組織委員会のメディア委員会は五輪取材経験が豊かな女性委員が会議をリード、森氏がその意見を尊重していたことを覚えている。そして2016年リオデジャネイロ大会の後、渋る日本オリンピック委員会(JOC)を説得し、五輪・パラリンピックのメダリスト合同パレードを実現させてもいる。そんな人がなぜ、あんな発言…と思ったが、会見で言及はなかった。

 「綸言(りんげん)汗のごとし」。公的な人の発言撤回などありえない。会見をもって幕引きを図ろうとした組織委員会やJOCの安易な姿勢も火に油を注いだ。

 批判は海外に拡散

 共同通信が実施した全国電話世論調査では、森会長を「適任と思わない」が59.9%で、「適任と思う」6.8%を大きく上回る。女性に限れば、63.5%と4.2%である。組織委員会やJOCは世論を重く受け止めなければならない。

 組織委員会は慌ててホームページに見解を掲載。森氏の発言を「不適切」とし、改めて「多様性と調和」を強調した。しかし具体策に踏み込んでいない。事は森氏一人の進退で済む話ではない。日本のスポーツ界の姿勢、ひいては日本社会のあり方が問われている。

 「#DontBeSilent (黙っていないで)」「#GenderEquality (男女平等)」というハッシュタグ投稿がツイッターで広がっている。ドイツやスウェーデンなど欧州の在日大使館や欧州連合(EU)代表部を中心とした抗議である。謙虚に耳を傾けるべきだろう。

 批判は海外に拡散する。ただでさえ、日本は男女平等度合いを示す世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数の順位が152カ国中121位と低い。国際的には、女性の社会参画が遅れた国とみなされている。対処を誤ればボイコットを招きかねず、今夏の大会開催にも支障が出よう。いや、日本批判の火種ともなり、隣国の慰安婦問題における主張に勢いを与えかねない。

 JOCが具体策示せ

 まずは発端となったJOCが主唱し、性差別問題の改善に向けた方針、具体策を示すべきではないか。スポーツ庁策定の「ガバナンスコード」に従い、組織における女性理事の比率を40%とする方針を決めたのだから実行していく“責務”がある。

 日本のスポーツ界、組織はどうあるべきか、森氏も含めたこの分野のリーダーも参画し検討する場を設けてはどうだろう。この発言を奇貨に、女性参画が進めば、それはレガシーとなる。

 スポーツビジネスに言及する視点からも、看過できない。スポーツビジネスはスポーツの持つ本質に起因した「イメージ」を売っている。イメージが低下すれば、スポンサーにも大きな影を落とす。スポーツビジネス振興のためにも、真剣に考えていくべき問題である。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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