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赤字路線バスを救う「共同経営」 進む協調と不協和音

 赤字に苦しむ路線バス会社同士が提携し、ダイヤや運賃を調整して路線を維持する「共同経営」が地方都市で広がりつつある。昨年11月に施行された独占禁止法の特例を活用したもので、熊本市や前橋市では協議が進む。ただ、路線バスをめぐっては利害関係がからむ路線の調整が難しい面もあり、バス事業者と自治体との路線再編議論が中断したところもある。

 新方式で赤字削減へ

 各地の市街地では、同時刻にバス停に複数バスが来て客を奪い合うなどしている地域もある。これを、会社間で路線を譲渡したり、1社に一本化したりするほか、一定の間隔で運行する「等間隔運行」ができるようダイヤ調整も行うのが「共同経営」だ。こうした行為は以前は独占禁止法に抵触する恐れがあったが、路線バス網維持を目指す特例法で可能になった。

 熊本市では、路線を持つ九州産交バス(熊本市)や熊本都市バス(同)など5社が、中心市街地と周辺の4区間で、重複運行している路線の整理を共同経営の枠組みで行う。2月下旬に国土交通省に認可申請を行い、4月の開始を目指している。

 5社の赤字は総計で年間30億円程度で推移。それに今年度は新型コロナウイルスに襲われた。バスの利用者数は激減し、毎月、前年の7割程度に落ち込む。こうした状況に、5社は共同経営することで令和5年度までの3カ年で総額9100万円の赤字削減を見込む。

 5社でつくる「共同経営準備室」の事務局を務める熊本都市バスによると、協議は目立った紛糾もなく進行した。もともと熊本都市バスは平成19年に他の3社が共同出資して設立され、旧熊本市営バスの路線を引き継いだといい、同社の担担当者は「昔から熊本市内では事業者同士で連携する土壌があった」と話す。

 前橋市でも、群馬中央バス(前橋市)や関越交通(群馬県渋川市)など6社が11路線での共同経営に乗り出した。市中心部を走る路線バスを等間隔運行するのが主眼で、今年7月にも国交省に申請、令和3年度の後半に計画を開始する。

 11路線では同時刻に複数のバスが発着したり、逆に30分の待ち時間が発生したりと、ちぐはぐな状況があった。共同経営では、午前10時~午後4時までのオフピークの時間帯で、等間隔に運行できるようダイヤを調整する。事務局の前橋市交通政策課では「利便性をあげ、収益を増やすのがねらい」と説明する。

 協調難しい場面も

 路線バスの運行をめぐっては、必ずしも共同歩調が取れるわけではない。路線バス会社9社が乗り入れる岡山市では、路線の再編で市と事業者が3年にわたって議論しているが、意見の対立が目立ち、合意形成が難しくなっている。

 今年1月には、9社のうち1社が協議会を通さず、独自にJR岡山駅前への乗り入れを国に申請したため、7社がこの乗り入れについて法定協の議題とするよう市に要請。しかし2月の協議会の会議で、市側は「乗り入れの許認可権は国にある」として応じなかったため、会議は紛糾した。結局、「新型コロナウイルス禍で合意は困難」との意見を踏まえ、市が昨年提案していた路線再編の議論は中断されることとなった。

 同市内でも限定的な共同経営の取り組みは進む。同じ両備グループの両備ホールディングスと岡山電気軌道の2社は、重複している一部路線のダイヤ調整を実施する計画がある。また、運賃が「初乗り100円」で過当競争も指摘されているが、これについては8社が共同経営の仕組みを活用し、150円程度に調整する方針が決まった。

 ただ、不協和音が残ったままでは今後の共同経営に影を落としかねない。大森雅夫市長は「市民の足を確保することが前提。市もリーダーシップをもって計画をつくるが、事業者間の協調が重要」と話している。

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