--新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、気候変動や核問題といった人類の真の脅威に対処する準備ができていないことへの警鐘ともいわれる
「北半球で気温上昇が著しく、気候変動が重要なリスクだ。新興国の原生林開発や森林伐採で人間が未知のウイルスに接する機会が増え、シベリアなどの永久凍土が溶け出すことで中に閉じ込められた細菌やウイルスも外に出てくる。地球温暖化とグローバル化や国際観光の拡大が結びつき、パンデミックの危険性が強まっている」
--パンデミックは今後も起きるのか
「起こるだろう。足元でも新型コロナの変異種が増えて、PCR検査をすり抜け、ワクチンも効きが悪くなっている。新しいワクチンを作るのには半年かかるが、半年後には別の変異種が発生するためイタチごっこだ」
--米国ではバイデン政権が誕生し、パリ協定に復帰した。温暖化対策の流れは今年大きく変わるか
「グローバルスタンダード化する。既に企業は温暖化対策に配慮がないと金融機関の投融資を受けられず、投資家も株を買わなくなりつつある。バイデン政権は気候変動を国家安全保障と外交政策の優先事項に掲げ、日本により強いコミットメントを求めてくる可能性がある」
--日本でも菅義偉政権が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げた
「やるしかない。だが欧州と同等にはできない。脱炭素化の柱の一つが洋上風力発電だが、日本は沿海の水深が深く、設置可能面積は英国の6分の1程度。原発も新規建設は商業的に難しく、太陽光や風力、地熱、省エネで多角的に実現するしかない。今後は具体策を継続的に出すことが重要だ。50年までの目標だからと“打ち上げ花火”になれば、今後30年間の環境政策の遅れが少子高齢化に加え日本の国際競争力を一段とそぐことになる」
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すえざわ・ひでのり 大阪大法学部卒。1984年、三井銀行(現三井住友銀行)入行。日興コーディアル証券金融市場調査部長チーフストラテジストを経て、2013年から現職。財務省財政制度等審議会(財務相の諮問機関)委員も務める。香川県出身。