ルール整備が課題
一方で、犯罪に巻き込まれたり、中毒的に聞き続け依存になったりすることを懸念する声もある。すでに米国や日本では、数が限られている招待枠のネット上の売買が問題になった。また、運営会社がトラブル回避のためとして条項でルーム内の発言を録音することを定めていることに対しても疑問の声があがる。
今後、ネット上の音声データの扱いに関する制度整備が必至となる。吉川教授は「扱い方を間違えれば問題にもつながる。一方で、コロナで舞台に立てないアーティストの発表の場にするなどの可能性も考えられ、使い方は未知数。今は試行錯誤の時期だ」としている。
これまで、インターネット上のサービスは映像や画像、文字など主に視覚に訴えるものが多かった。一方、クラブハウスは、聴覚に着目したサービス。人気の広がりは、耳から情報を取り入れる市場には開拓の余地があることを示した。
「スマートフォンを見ている時間と比べ、イヤホンを着けている時間は短い。耳には、まだ空いている時間がある」。ラジオ番組の配信チャンネルも兼ね備えたニュースアプリ「グノシー」の運営会社で、マーケティンググループのマネジャーを務める石井健輔さんは指摘する。
ラジオ番組などをネット上で配信している「Radiotalk(ラジオトーク)」の運営会社取締役、高本慧さんもクラブハウスの流行を「聞くことに割く時間がまだ空いている状況を的確に突いたアプリだ」と考える。現在、ラジオトークの利用者数も伸びているといい、「クラブハウスが追い風になっている部分がある」と歓迎する。
クラブハウスの誕生に触発され、声のみでコミュニケーションを取る音声SNS市場への参入を目指す企業もある。「ZATSUDAN(ザツダン)」は昨年12月に試作版アプリを公開。3月以降に正式版をリリースする予定だ。運営会社で社長を務める関清仁(すみひと)さんは「文字よりも感情が読み取りやすい上、音声のみであれば時と場所を選ばない。音声によるコミュニティーはこれからも、もっと伸びる」と予測している。(粂博之、藤原由梨、渡部圭介)