■若手の人材獲得も
一方、コンテストを地域活性化に生かしているのが、生活関連用品のものづくりが盛んな東京都台東区だ。開催31回を誇る「ザッカデザイン画コンペティション」を主催する同区産業振興課の月岡正子地域産業担当係長は「レザーグッズや帽子など日本有数の服飾雑貨の産地をアピールするのが狙い」と話す。
応募数は増えておりPR効果には手応えを感じているが、地場産業に携わる企業数、生産金額、従業員数は右肩下がりだ。同担当の紫冨田史和氏は「先行きを考えると、小規模でOEM(相手先ブランドによる生産)に頼る業態からの転換が必要。区として自社ブランドづくりを支援していく」と危機感を募らせる。応募者のアイデアを地元企業が生かすとともに、若手人材の獲得につなげる思惑もあり、コンペへの期待は大きい。
受賞者はメーカーと組んで実際のモノづくりを体験できる上、選考に参加する百貨店、松屋銀座(東京都中央区)で限定販売の機会も与えられる。30回コンペで「発想とウイットの効いたネーミングが決め手」となって松屋銀座賞を受賞した湯野拓也さん(受賞時は高校2年生)のポケットチーフ兼名刺入れ「Kouiumonodesu(こういうものです)」は限定販売された6点が全て売り切れた。
JDNが運営するコンテスト情報サイト「登竜門」に19年に掲載された情報などをまとめた「コンテスト白書2020」によると、コンテストへの応募理由は「趣味・いきがい・気分転換・腕試し」(全体の29%)が「賞金・商品を得るため」(30%)に続く僅差の2位となった。
同社の滝沢純チーフプロデューサーは「日本人にとってコンテストが身近に感じられている証拠」と指摘する。コンテストを主催する企業への愛着が高まり、知名度も上がる。マーケティングやブランディング、リクルーティングに有効なコンテストに魅力を感じる企業、自治体は増えそうだ。(松岡健夫)