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先端技術都市「ウーブン・シティ」始動 トヨタ「大変革期」の試金石

 トヨタ自動車の先端技術都市「ウーブン・シティ」が始動した。静岡県裾野市で23日に建設に着手。街全体を実験場にし、移動を軸とした新たな技術やサービスを模索する。伝統的な自動車メーカーから人やモノの移動全般を手掛ける「モビリティー・カンパニー」への変革を占う試金石となる。

 ウーブン・シティは街全体をITでつなぐ次世代都市「スマートシティー」と位置付けられる。計画の最大の特徴は工場の跡地でゼロから街づくりをするところにある。地上には自動運転車専用、歩行者専用、歩行者と小さな車両併用の3種類の道路をめぐらせ、地下には物流用の地下道を用意する。他の交通がなく、気象の影響も受けにくい。

 豊田章男社長は「インフラとセットで実験することで(新技術の)開発のスピードは極端に上がっていく」と胸を張る。トヨタとともに実験に取り組む技術者や研究者らには、成果が出ない場合に退去を求める仕組みを検討するなど、競争意識を持たせる。

 トヨタが自ら街づくりに乗り出すのは、既存事業に大きな危機感を抱いているためだ。自動運転や通信技術の発展などで車の役割は大きく変わり、業界は「100年に一度の大変革期」を迎えている。

 創業20年に満たない米電気自動車(EV)メーカーのテスラはソフトウエアの力で急速に成長。市場から大きく評価され、今では企業価値を示す時価総額は70兆円超とトヨタの約3倍だ。アップルも市場参入の機会をうかがっており、グループ販売台数で世界首位のトヨタでさえも、その立場は保証されていない。

 ウーブン・シティを担当するトヨタ子会社のジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は「開発と実証を迅速に行い、改善しながら、生み出したモノはグローバルに展開する」と将来像を描く。

 「個人として大金を出資した」。豊田社長は今回のプロジェクトに創業家として相続した財産を投じ、トヨタの改革を先導する姿勢を明確にしたほか、長男の大輔氏をプロジェクトの幹部として起用するなど、並々ならない覚悟を示す。

 織機メーカーとして起業し、自動車製造にかじを切ってからグローバル企業に成長したトヨタは、再び「フルモデルチェンジ」(豊田社長)に向けて歩みだした。

【用語解説】スマートシティー 通信技術やセンサー、人工知能(AI)などの先端技術を活用した街のことで「SMART(頭が良い)」と「CITY(街)」を組み合わせた言葉。日本では2010年ごろから浸透している。主にエネルギーの効率化目的で始まり、環境保全や防災、健康など扱う範囲を広げている。政府は国内での導入や海外へのシステムの輸出を支援している。

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