金融

西日本フィナンシャルホールディングス新社長に村上氏「社会の変化に対応する」

 西日本フィナンシャルホールディングス(FH)は25日、村上英之取締役執行役員(59)が社長に昇格する人事を発表した。村上氏は傘下の西日本シティ銀行の頭取も兼務する。谷川浩道社長(67)はFHでは代表権のある副会長に就任、同銀行では頭取から退き、代表権のある会長に就く。FHの久保田勇夫会長(78)は留任するが、兼務する同銀行の会長は退き代表権のない取締役となる。いずれも6月下旬に開く株主総会を経て就任する。会見で、村上氏は「グループの伝統、強みを踏まえ、九州の発展に貢献する」と抱負を語った。(中村雅和)

 初の生え抜き

 村上氏は昭和58年、同銀行の前身の1つ、西日本相互銀行(59年から西日本銀行)に入行し、人事部長や総合企画部長などを歴任した。同銀行の経営トップには代々、大蔵省(現財務省)出身者が就き、平成16年に福岡シティ銀行との経営統合で西日本シティ銀行が誕生してからも、この流れは続いた。村上氏は生え抜きとしては初めての頭取就任となる。

 福岡市内で開かれた記者会見では、初の生え抜きトップについての質問が相次いだ。

 久保田氏は「その時々で誰が一番適しているか、ということだ」と述べ、谷川氏も「企業にとって誰がベストかということだ」と強調。村上氏は「歴代トップがご自身のキャリア、属性を存分に発揮され、対処してきた姿を目の当たりにしてきた。私も銀行や地域への思いの強さは人後に落ちない。歴代頭取同様に全身全霊であたっていきたい」と語った。

 最初は“カミナリ”

 今回の人事を決定した指名・報酬諮問委員会の委員長を務めた久保田氏と村上氏には浅からぬ縁がある。

 平成18年6月に頭取に就任した久保田氏から初めて“カミナリ”を落とされたのは当時秘書を務めていた村上氏だった。

 母親を亡くしたばかりで、福岡での住居も決まっていなかった久保田氏に対し、村上氏が「就任時の慣例」として、取引先へのあいさつ回りと行員向けのビデオメッセージ収録を日程に入れた。この判断を「行内論理の優先」と見た久保田氏は、村上氏を叱責したという。

 久保田氏は行員の意識改革に着手したが、一朝一夕にはいかない。谷川氏も「正直申し上げて、私が期待するレベルには達していなかった」と23年5月の入行時を振り返る。その谷川氏も26年の頭取就任後には「人間力の向上」との旗を掲げ、顧客目線に立った企業風土づくりに努めた。

 「久保田頭取時代は、花を咲かせるために豊かな土壌づくりをされ、私は弱い日差しのもとだったが、美しい花のつぼみを作ることができた」

 谷川氏は会見で、こう振り返った。最初に叱責された後も、村上氏は久保田、谷川体制下で一貫してトップの近くで起用され、頭角を現した。戦略立案や店舗管理、資産運用など幅広い分野を任された。

 その働きぶりを認められ「オールラウンダーで、非常に優等生」(久保田氏)、「あらゆる分野に精通し、安定感がある」(谷川氏)と両トップから厚い信頼を得るに至った。

 常にオープン

 マイナス金利政策の長期化に加え、金融とITが融合したフィンテックの進展による異業種を巻き込んだ競争激化、新型コロナウイルス禍で不透明感が増した世界経済の先行きなど銀行を取り巻く環境は厳しい。

 村上氏は、当面の課題として、自ら策定の中核を担った中期経営計画で掲げたデジタル化▽総合金融力の強化▽国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組み-の3点を挙げ、「厳しい経営環境だが、顧客基盤、経営基盤はしっかりしている。アグレッシブに対応していく」と述べた。

 金融業界では政府主導の再編圧力が高まる。この点について、村上氏は「合併ありきではなく、地域経済や顧客のプラスになるかどうかだ」とした上で、「従来は銀行同士(の合併が主流)だったが、今後は他業界や経営統合ではないアライアンス強化などが広がるだろう。当社は常にオープンだ。話があれば前向きに検討したい」と語った。

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