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ヤフー・LINE統合 鍵は「AIでサービス進化」

 Zホールディングス(HD)とLINEの統合で、期待が高まるのが、日本発の世界に通用するIT企業の誕生だ。米中の巨大ITが巨額の利益を上げる中、日本企業はこの分野で後れをとってきただけに関係者の期待は大きい。

 鍵を握るのが人工知能(AI)技術だ。AIの活用で、両社のサービスを、世界で使われるものへと進化させられるかが問われそうだ。

 「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーへ挑戦していきたい」。1日の記者会見で、ZHDの川辺健太郎社長はそう力を込めた。

 両社の統合で、真っ先に相乗効果が期待できるのが決済分野だ。特にQRコード決済は、先駆け的な存在の「LINEペイ」と、最大手の「ペイペイ」が一緒になれば、利用できる店舗などが一気に拡大する。決済サービスコンサルティングの宮居雅宣社長も「スマホ決済の分野では敵無しとなる」と話す。一方で決済だけでは世界とは戦えないとしつつ「検索やSNSなど各種サービスで得られるデータをどう活用していくかが重要だ」と指摘する。

 こうした中、新生ZHDが力を入れるのがAIの活用による各サービスの高度化だ。ZHDを傘下に持つソフトバンクグループ(SBG)は、AIを活用した世界中のベンチャー企業に投資を行っており、投資先の技術を傘下の事業会社に取り込むことで、グループ全体の成長につなげるという戦略を描く。

 SBGの孫正義会長兼社長もグーグルなどのGAFAを念頭に「インターネット革命は広告と小売業の一部を置き換えただけだ」とし、「AI革命は医療や教育、自動運転などさまざまな産業を一気に塗り替える」と、AIが持つ可能性を強調する。

 一方でAIはGAFAなども当然、注力する分野で、どう使っていくかが重要となる。この日の会見でもAIを用いた革新的な新サービスの発表はなく、まだ具体的な世界戦略は描けていない。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、GAFAがさらに力をつける中、「差はむしろ開いた」(川辺氏)のが実態だ。

 巨大ITをめぐっては各国政府による規制強化が進む。プライバシー意識の高まりで、個人データの取り扱いも難しくなってきている。ルールがほとんどなく、次々と規模を拡大できた時代に築き上げたGAFAの牙城を崩すのは容易ではない。 (蕎麦谷里志)

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