高論卓説

“患者力”身に付け上手に病院利用新型コロナで医療体制が進化 

 新型コロナウイルスの第3波。緊急事態宣言から少し収束の気配に至っている。感染拡大は大都市を中心に広がり医療は逼迫(ひっぱく)した。新型コロナ患者を多数受け入れた病院における通常の医療への回復には、少し時間を要するであろう。地方では一部を除いて大きなクラスター(感染者集団)の問題は少なかったが、ひとたび起これば本当に通常の医療を受けられる選択が狭まってしまう。

 新型コロナは平時に潜んでいた医療や保健衛生の問題をあぶり出すこととなった。新型コロナ以外の感染症などの病気が減っており、また、患者側の意識の問題、すなわち、なるべく病院に行かないようにしよう、という気持ちも生じた。オンライン診療やデジタルヘルスによって自分で自分を管理する、という技術も体制を含め、医療を取り巻く環境は進化した。

 高齢化社会がますます進む中、平均寿命は上がっているが、健康寿命を延ばしたい、そのために何をすべきか、一人一人が考えるべき時代へと進んでいる。医療者は患者のために力を尽くす、声に耳を傾ける、もちろん大切なことである。しかし、どうにもならない事態が起こりうることを身をもって知った時期でもあった。

 医療体制は進化したが、本当に十分なのかどうか、事態が起こってみないと分からないこともたくさんあった。患者側からも、思うように医療を利用できない、そんな場面も多々あったであろう。本当に懸命な医療者が、患者とのやり取りの中で嫌な思いをし、現場を離れていくこともある。

 これからは、医療者・患者双方が医療を支えていく時代へと加速する。オンライン診療などの進化とともに、誰もが持ってほしい、上手に医療を利用するために必要な力を提案したい。

 (1)備える力 医療は誰もが常に平等に利用できるものではない。地域や環境の違いもある。オンライン診療や医療相談を含めて医療の状況を知り、自分のために活用するよう備えてほしい。

 (2)客観視する力 情報に翻弄されていないだろうか。事実と解釈、感情をきちんと分けて考えられているだろうか。ちょっと引いて自分も含めて見渡せる力を持ちたい。

 (3)対話する力 どんなに人工知能(AI)が進んでも、医療や介護は人のコミュニケーションが基本。自分のことをしっかり説明できることは、医療者の助けになる。賢い患者になることは自分のためでもある。

 (4)覚悟する力 医療には限界がある。なんでもやってもらえるという状況ではなくなる可能性はある。本当に信頼して任せる覚悟ができているか。いざというときには戦う覚悟も必要だが、多くのトラブルは事前の関係や対話のずれによることが多い。

 (5)生きる力 人は死ぬ。死を考えることは「生き方」を考えることである。病院でできることは限られており、「有事」はいつやってくるか分からない。健康寿命を延ばしたいと願うなら、「人生のリスク」に対処する。「こんな風に死にたい」と言えるように、「今」を自分軸で生きる。治療は全部生きるための手段、生きる目的は自分で決めることである。

 医療には関わりたくないと思っても、関わってしまう状況は起こりうる。医療は生きる上で活用していただく大事な限られたリソース(資源)である。上手に活用して医療を守り、自分を守ってほしい。

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 永井弥生(ながい・やよい) 医療コンフリクトマネージャー。医学博士/皮膚科専門医。山形大医卒。群馬大学病院勤務時の2014年、同病院の医療事故を指摘し、その後の対応に当たり医療改革を行う。群馬県出身。

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