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生体認証の新技術、開発続々 日立が非接触で指静脈識別、パナは実証実験

 IT大手が生体認証の新技術や新サービスを相次ぎ投入している。日立製作所は2日、指の静脈パターンを非接触で読み取れる認証装置を開発し、9日から販売すると発表。この日はパナソニックも東京ドーム(東京都文京区)で顔認証の実証実験を始めると発表した。生体認証は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「非接触」ニーズも追い風となり、世界的に需要が拡大している。各社とも外部企業と連携しつつ、売り込みを強化したい考えだ。

 日立が開発したのは、2センチ程度の距離で人さし指と中指、薬指をかざすと本人確認ができる指静脈認証装置「C-1」。かざした指に赤外線を当て、内蔵カメラで静脈パターンを読み取る一方で、事前登録したパターンと照合する仕組み。約2秒で識別可能といい、「数百万人規模の中から本人を割り出せる」(夏目学・サービス&プラットフォームビジネスユニットセキュリティソリューション本部部長)という。

 パソコン内蔵のカメラで識別できるようにするソフトウエアの開発キットも開発した。POS(販売時点情報管理)システム最大手の東芝テックやセキュリティーゲートを手掛けるクマヒラ(東京都中央区)と連携、主にC-1は小売店や飲食店向け、開発キットはビジネス向けに売り込む。周辺機器などを含め、今後5年間で累計500億円の売上高を目指す計画だ。

 東京ドームと協業

 一方、パナソニック傘下のパナソニック システムソリューションズ ジャパン(東京都中央区)は読売新聞東京本社や読売巨人軍、東京ドームと協業。東京ドームで顔認証の実験を3日に始め、関係者やスタッフ約200人の入場管理や店舗での一般来場者向けグッズ販売などに役立てる計画。パナソニック システムソリューションズ ジャパンは「感染症対策として有効な『接触機会の低減』を実現する」と話す。

 生体認証では、富士通もマスクを着けたままでも99%以上の高精度で個人を識別できる顔認証技術を2021年度中に実用化する。事前登録した素顔の画像から疑似的にマスクを着けた姿を作成し、人工知能(AI)に学習させることで、マスクを着けない場合と同程度まで識別精度を高めた。手のひら静脈認証と組み合わせれば、100万人規模の中から個人を特定できるという。

 マスク着けたまま

 コンビニのキャッシュレス決済などでの利用を想定。川崎市内にあるローソンの「レジなし店舗」で富士通社員を対象に実証実験を行っている。マスクを着けたままでも高精度で顔を識別できる技術は、NECも昨年秋に発表している。

 生体認証はバイオメトリクス認証とも呼ばれ、日本企業が技術開発で海外に先行しているとされる。一方、東京五輪では大会関係者の入場管理にNECの顔認証技術が使われる予定で、生体認証の認知度はさらに高まる見通しだ。各社は新型コロナの感染拡大が収束した後も、新常態(ニューノーマル)の下で非接触ニーズは高止まりすると予想。日立の夏目氏は「新しい日常においても生体認証はユーザーとデジタルをつなぐ大事な接点になる」と強調する。(井田通人)

 ■IT大手による生体認証の主な取り組み

 日立製作所 指の静脈パターンを非接触で読み取れる認証装置を9日に販売開始

 パナソニック 東京ドームで3日から顔認証の実証実験

 富士通 マスクを着けたままでも高精度で個人を識別できる顔認証技術を2021年度中に実用化

 NEC 東京五輪で大会関係者の入場管理に顔認証技術を提供

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