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双方向ネット工場見学に脚光 コロナ禍でも迫力映像で疑似体験、有効な営業ツール

 新型コロナウイルス感染拡大でオンライン工場見学会を開催する動きが広がっている。ビデオ会議アプリを使い、手軽にチャット形式で質疑応答ができるとあって、人気を呼んでいる。大手企業が積極的にオンラインに切り替える一方、中小製造業は技術や設備を顧客に見てもらうための営業ツールとして展開、自社の信用を高めて新たな商談につなげようとしている。

 「次はポテトチップスの大きさを選別するピッキングの中継現場とつなぎます。実況をよろしくお願いします」

 ポテトチップスが川のように流れる迫力ある映像に切り替わると、臨場感あふれる現場から作業員がリポートする。

 これは菓子大手カルビーの北海道工場(千歳市)のオンライン工場見学会の一場面だ。見学プログラムにはガイドがクイズを出して、参加者が画面上で回答する双方向の機能も備える。

 コロナ禍で工場見学会の中止が相次ぐ中、カルビーはインターネットを活用し、自社の取り組みを知ってもらう方法を模索してきた。何度か議論を重ねた結果、スマートフォンのカメラを使って、迫力ある映像を配信し、双方向の利点を生かした内容にすることを決めた。

 気軽に質疑応答

 昨年11月から北海道工場と清原工場(宇都宮市)で先行的に開始した。北海道工場の見学担当の花田麻美さんは「申し込みは好調で子供からシニアまで幅広い世代から来ている」と語る。2月から広島工場(廿日市市)でもスタートし、他の工場での開催も検討している。

 航空大手の日本航空も昨年11月から週5日、自宅や学校で体験学習ができる「JALリモート工場見学」を開催する。飛行機の大きさや飛ぶ仕組みなどを学べる内容で、チャット形式で質疑応答ができる。

 羽田空港にある格納庫の見学では、欧州航空機大手エアバスの「A350」最新機種を間近に見ることができ、整備士になったような疑似体験が楽しめる。これまで約90回開催し、約1万2000人が参加。体験学習の申し込みが多いが、シニアの参加も目立つという。渡辺泰彦社会貢献グループ統括マネージャーは「緊急事態宣言再発令後の1月は、前月比150%増だった」と話しており、参加は増加傾向にある。

 このほか大手ではハウス食品やキリンビール、キユーピーなどもオンライン工場見学会を開催している。北海道コカ・コーラボトリングも3月から小学校の社会科学習向けに始めた。

 信用高める効果も

 一方、中小製造業でもオンライン工場見学会を始める動きが出ている。金属熱処理の武藤工業(神奈川県大和市)は昨年10月から月1回程度実施している。本社工場と東北事業所(岩手県北上市)を結んで、熱処理の方法などを説明し、疑問や課題について回答している。

 中村正美総務部長は「取引があるが、これまで工場に来たことのない顧客などに参加を呼び掛けている」と話す。工場内の設備や熱処理の作業を見学してもらうことで、顧客の信用を高める効果を期待する。

 最近ではネットで同社の取り組みを知り、関心を持った団体などから参加の申し込みがあったという。中村部長は「今は熱処理を知ってもらうことが中心だが、今後は新規顧客の開拓につなげたい」と意欲を示す。

 工作機械や産業機械などの部品を手掛ける中村製作所(三重県四日市市)も昨年3月から月1回、生配信による対話型オンライン工場見学会を行う。新型コロナの影響による受注減を想定し、新規顧客を開拓するために対話形式の見学会を始めた。

 見学内容について、営業担当の村上瞳さんは「工場内の設備や強みでもある加工技術を間近で見てもらい、気軽にチャットで質疑応答できる形にしている」と話す。加工を詳しく見てもらうため、さまざまな角度から撮影するなど見せる技術も磨く。

 オンライン工場見学会が中小企業でも広がっているのは、有益な営業ツールになるからだ。しかもビデオ会議アプリでコストをかけずに手軽に実施できる。新型コロナの完全な収束はなお見えない。企業の間でオンライン形式が工場見学会の主流になるかもしれない。 (黄金崎元)

■企業が開催する主なオンライン工場見学 企業 内容 カルビー 国内3工場の製造現場の実況生中継など 日本航空 羽田空港内の格納庫にある飛行機の整備など キリンビール 国産ホップの魅力や仙台工場のビールづくりなど 中村屋 親子で楽しむ「中華まんミュージアム」を実施 キユーピー 見学施設「マヨテラス」のオンライン版 ハウス食品 静岡工場で、近隣の小学校向けに社会科見学を実施 北海道コカ・コーラボトリング 札幌工場で、小学校の社会科見学向けに実施 アイダ設計 茨城工場の木材の加工工程など 

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