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「頼みの綱の鈴木修会長が退任」軽自動車業界が“中国製EV”の台頭におびえるワケ (1/3ページ)

 「ありがとう。バイバイ」とほほ笑んで会場を後に

 「やはり、寄る年波には勝てなかったのか」--。記者の間からはこんな声が漏れた。

 2月24日、スズキを40年余り引っ張ってきた鈴木修会長の退任会見でのことだ。人懐っこい表情は相変わらずだったが、声はかれ、時折、聞きづらい発言が目立つなど、記者の質問をとぼけながらはぐらかす往年の掛け合いは影を潜めた。

 自らを「中小企業のおやじ」と呼び、スズキを世界的企業に引き上げた鈴木会長。「(昨年3月に創立)100周年の峠を越えたこともあり決意した。今後は現役役員が気軽に相談できるように、相談役として全うしたい」と退任の心境を述べた。

 その修会長も91歳。健康不安説を問われた記者からの質問には「昨年はゴルフを47回やった。身体はピンピンしている」と否定したが、体の衰えは隠しようもなかった。

 会見の最後は「仕事は生きがいだ。皆さんも仕事を続けてください。ありがとう。バイバイ」とほほ笑みを浮かべ右手をあげながら会場をゆっくり後にした。

 「庶民の車」として優遇されてきた軽自動車

 会見で修会長の隣に座った息子の俊宏社長は「会長自身は『生涯現役だ』と言っていたので、このタイミングで退任というのは思ってもみなかった」と突然の会長の一線からの引退に率直な思いを述べた。修会長の引退を受けて、翌日のスズキ株は217円(4.4%)安の4752円まで下落、2月1日以来、約1カ月ぶりの低水準を付けた。

 「修会長の威光もさすがに陰ってきたか」という声もどこからともなく聞こえてくる。だが、修会長が一線を退いたところでスズキの実権は引き続き同会長が握り続けることは間違いない。

 24日の会見で俊宏氏は「自分の使命は軽自動車を守り抜くことだ」と話した。しかし、昨年から今年にかけての菅政権での「脱炭素」宣言後、庶民の車として税制など多くの優遇を受けている軽自動車をどう位置づけるかをめぐる議論の中で、「修会長の退潮」を感じた関係者は多い。

 電動化の義務付けは「軽自動車」の存続に直結

 政府は2030年代半ばに新車販売を電動車のみとする目標を掲げたが、軽自動車も対象に入れるかどうかが大きな焦点となった。これまでの修会長なら当然、軽の電動化について反対すると思われていた。スズキは電動化に遅れていることに加え、電動化はコストアップにつながる。「庶民の足」を標榜する軽メーカーにとって、電動化を義務付けられることは業界の存続に直結する。

 しかし、大方の予想に反して修会長は、目立った反論もせずにこれを受け入れた。

 軽の規格や優遇税制など国会議員や霞が関に張り巡らせた人脈を駆使して数々の優遇を勝ち取ってきたのは修会長だ。それだけに、黙認に近い今回のスズキの対応に業界内から「修氏はかつての勢いはない」との声が聞かれた。

 スズキは2月24日の会見で2026年までの中期計画を公表。5年間で累計1兆円の研究開発費を投じて電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの開発に充てるとしたが「価格などの面で軽の優位性をどこまで発揮できるか、非常にハードルは高い」(大手証券アナリスト)と指摘されている。

 約47万円で120kmを走る4人乗り中国製EV

 スズキをめぐる問題は政府の掲げる「脱炭素」への対応だけにとどまらない。

 軽自動車と正面から競合する超小型EVの相次ぐ参入だ。特に脅威となる存在として浮上しているのが中国勢の動きだ。

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