流通ビジネス新時代

マッチングワールド(1)在庫流動化ビジネスで独走

 独自開発のIT(情報技術)プラットフォームを基盤に在庫の流動化事業に取り組むマッチングワールド(東京都中央区)は、2年後の年商100億円と株式上場を目標に掲げた。上場により、信用力を強化するとともに、資金力と人材獲得力を一気に引き上げることで、事業規模を一段とスケールアップしていく計画だ。町田博代表取締役は「株式上場は、この事業の真のスタートになる」と考えている。

 2年後に年商100億円で株式上場へ

 ITで売り手と買い手をマッチング

 「在庫の流動化で業界の健全な発展をサポートする」というのがマッチングワールドのキャッチフレーズ。メーカーから一次問屋、二次問屋を経て小売店で一般消費者に販売される商品は、流通の各段階で在庫が発生する。同社は「M-マッチングシステム」と呼ぶBtoB(企業対企業)プラットフォームを使って、これらの在庫を処分したい企業とそれを仕入れたい企業をマッチングするというユニークな事業を展開している。

 町田氏がこの事業を始めたのは、テレビゲーム(家庭用ゲーム機やソフト)の卸問屋に「不良在庫をどうにかしてくれないか」と相談されたのがきっかけ。町田氏はかつて自身でゲーム卸問屋を経営、日本で3本の指に入る売り上げを誇っていたものの大量の在庫を抱えて倒産した苦い経験がある。「在庫をうまく活性化できれば、倒産で迷惑をかけた業界に恩返しできる」と考えた。

 2001年6月に前身となる株式会社マチダを設立。最初はファクスでゲームの在庫情報を顧客に案内するなどして顧客企業のニーズを獲得。儲けをすべてM-マッチングシステムの開発に投じ、ファクスからITプラットフォームに移行する2006年9月、現社名に変更した。

 22兆円のブルーオーシャン

 扱う商材はゲームから順次拡大。現在はゲームのほかにおもちゃ、トレーディングカード、携帯電話端末、キャラクターグッズ、DVDを中心に約37万アイテムが常時、M-マッチングシステム上に掲示されている。

 このシステムを使って商材を売買する顧客もメーカーや問屋、量販店を中心とする従来の取引先に加え、近年は「副業」や「兼業」により、これら商材をネットショップなどで販売する個人事業主や小規模小売店などにも広げてきた。

 さらに、創業当初からコツコツと海外の取引先を開拓してきたことから、アジアを中心に海外の顧客も多い。現在、同システムを利用する企業は6000社超に上り、副業関連個人事業主も700人超、海外バイヤーは800社超が登録している。

 これら顧客の増加に伴い、近年の業績は順調に推移し、2021年8月期の売上高は約66億円(前年比約13%増)と4年連続の増収を見込んでいる。同社では、売買が成立すると、いったん商品を引き取り、検品したうえで出荷するため、倉庫兼物流センターが重要な役割を担っている。昨年10月には本社を東京都文京区から同中央区に移転、本社ビル内にある倉庫兼物流センターの床面積を1.5倍に拡大した。これにより、「少なくとも年商100億円規模までは対応できる態勢を整えた」(町田氏)という。当面、続く2022年8月期の売上高80億円を目指し、さらに2023年8月期には売上高100億円を達成するのが目標。この過程で、株式上場を果たす計画で、3月期決算への決算期変更も検討する。

 今のところ、マッチングワールドのような事業形態は日本でも先駆的な存在である。ある調査によると、日本国内における法人の流動資産廃棄損は年間22兆円に上るとされる。同社の目の前には広大なブルーオーシャンが広がっている。

 過去の上場断念時の経験も活かす

 上場を目指すのは、「この商売は上場して初めて本格的にスタートする」(町田氏)と考えるからだ。M-マッチングシステムは売り手も買い手も高い匿名性を担保しているのが大きな特徴。売買の仲介者たる同社が上場すれば信用力が増すので、「顧客のメーカーさんが安心する」(同)というわけだ。

 なおかつ、上場することで資金調達力が向上すれば、新しい商材を導入するとともに、その商材を扱う顧客も増やし、倉庫兼物流センターもさらに拡大することが可能になる。同社が扱う商材は、ゲームにしろ、カードにしろ、その商品の価値を見極める“目利き”が必要。そうした専門家人材の確保もしやすくなるはずだ。

 実は、同社は過去に上場寸前までいったことがある。業績が急拡大し、2008年8月期に売上高61億円を記録したときだ。それがリーマン・ショックで売り上げが半分以下にまで落ち込んだうえに、取引先金融機関の貸し剥がしに遭い、断念を余儀なくされた。しかし、当時習得した株式公開のノウハウはしっかりと温存。それを基に今後、内部管理体制・内部統制の強化など着々と準備を進めていく方針だ。

 高い匿名性と丁寧な検品 過剰在庫と必要在庫をITと人で結ぶ

 マッチングワールドが運用するM-マッチングシステムには、同社の審査をパスしてIDパスを取得すれば、だれでもいつでも無料で登録できる。商品を売る場合には、JANコード(世界共通の商品識別番号)や数量、卸値、出荷日などを入力して掲示し、買い手がつけば手数料を支払うだけだ。

 ただし、売り手も買い手も社名は掲示しない。企業にとって在庫処分は企業秘密だからだ。「とくに、メーカーさんはグループ内に流通部門があることもあり、社名が表に出ることを嫌う」(町田氏)。この高い匿名性を担保しているのが同システムの大きな特徴の一つだ。

 もう一つの特徴は、あえて営業倉庫は使わず、自家用倉庫兼物流センターで、すべての商品を一品一品丁寧に検品していることだ。それも、売り手から商材が入荷する際と、注文が入って出荷する際の2回行う。これにより、商品品質を保証。顧客からの「マッチングワールドの商材を買えば安心だ」との高い評価につながっている。ちなみに、大手ショッピングサイトでは自社による検品作業はしていない。

 このため、新品を売ったはずが中古品を返品してくる悪意のある買い手もいるという。町田氏は「検品という手のかかる作業をしてきたことで、海外のお客さんも含めて品質に対する信頼を得られた」と振り返る。

 単にM-マッチングシステムを介したインターネットの取引だけに頼るのでなく、同社の営業担当者が電話やファクス、電子メールを駆使して、顧客に有用な情報を流したり、アドバイスしたりして売買を促進しているのも、他のショッピングサイトにはない同社の強みだ。こうした運営を同社では、「過剰在庫と必要在庫をITと人で結ぶ」と表現している。ITだけでなく、人も介在するというのが特筆すべき特徴で、この運営方針は今後も不変だという。

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