最新テクノロジー 変わる医療現場

(1)内視鏡検査、ポリープ見落とし激減 大腸がん発見 AIなら0.4秒

 「ピピー、ピピー」。内視鏡が大腸の内側を映し出すと、突然大きな警告音が鳴った。画面には「腫瘍の確率89%」の表示。内視鏡カメラを患部に近づけ、約500倍まで拡大すると、血管や細胞の内部まで詳細に見える。人工知能(AI)は瞬時に「悪性の可能性68%」とはじき出した。かかった時間はわずか0.4秒だった。

 「これは手術が必要だな」。昭和大学横浜市北部病院の工藤進英消化器センター長は検査映像を見ながらつぶやいた。工藤氏は、内視鏡の大腸検査を国内外で約30万例もこなした「神の手」を持つと称される。内視鏡検査は高度な操作技術が要求されるが、新人医師なら1時間かかる検査を数分で終えた。

 日本人の大腸がんの死者数は部位別で2番目に多く、年間約5万人が亡くなっている。医師は内視鏡検査の映像から病変を見つけ、腫瘍やがんと判断すれば、そのまま切除する。検査はがんの早期発見や予防に大きな役割を果たしている。

 工藤氏は「検査では腫瘍を見分ける『目』が重要だ」と話す。盛り上がったポリープの部分は見つけるのが比較的容易だが、へこんだ部分にがんがある場合もある。「経験を積んだ医師でも相当難しい」という。

 そこで工藤氏は、がんを見分ける目をAIに代替させようと、内視鏡シェアで世界トップのオリンパスと共同研究を進めてきた。ベテラン医師が診断した画像数十万枚をAIに解析させて、自動でがんを見つけ出す機器「エンドブレイン」を開発した。

 約95%の確率でがんを発見できるといい、国から医療機器として承認された。「AIの導入で検査の精度が向上し、発見が難しかったポリープの見落としは大きく減るだろう」と指摘した。

 AIが最も得意とする分野の一つが画像診断だ。内視鏡以外でも、AIが病気の部位をエックス線撮影やコンピューター断層撮影(CT)をした画像を瞬時に分析し、医師をサポートする検査が普及しつつある。肺のCT画像から新型コロナウイルス感染の可能性も判断できる。

 将来的に初期段階のチェックをAIが行えば、医師の作業量を減らすことができるが、AIはあくまでサポート役で最終的な診断は人間の医師が行う。工藤氏は「AIが経験が浅い若い医師の技術レベルの引き上げにつながってほしい」と期待を込めた。

 最新テクノロジーの医療分野への応用が進んでいる。AIは発病前に病気の兆候を見つけ、適切な予防・治療方法を提案する。離れた場所からの医療も可能になった。急速に変わりつつある医療現場を追った。

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