高論卓説

コロナ禍の消費に新たな潮流 「巣ごもり」合ったサービス続々

 新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり」にすっかり参ってしまった。そうだ!バス旅行に行こう!どうせなら、行ったことがないところへ向かおう。「島根県邑南町(おおなんちょう)・魅力発掘ツアー!」にいざ出発しよう。(田部康喜)

 「旅のしおり」をみると、小さな日本地図の中国地方の日本海側に矢印があって、「このへん」というおおざっぱな表現がうれしい。まず、「LOVE OHNAN」とデザインされた缶バッジを胸につける。オタマジャクシのようにみえる、擬人化した夫婦と子供は、町のシンボルである、国の天然記念物のオオサンショウウオだ。

 島根県の中央部に県下最大の町である。東京から空路で羽田空港から広島空港で、バスに乗り継いで2時間かかる。今回の旅は実は、「オンラインツアー」だ。2月28日午後1時、書斎のパソコンからZoom(ズーム)で出発。ガイドの案内で1時間余りをかけて、町内の名所を巡る旅である。

 「あらかじめお送りしておいた、邑南町の名産をご用意ください。召し上がりながら旅をお楽しみください」-冷蔵の宅配便で数日前に送ってきた名産は、「わら灰こんにゃく」と「ミルクジャム」は初めてみる。小さなカップ入りの「チーズケーキ」もあった。

 「雲海の見える展望台」で中国山地を一望すると、この町の位置がよく分かる。田舎料理屋に移動して、「わら灰こんにゃく」の謎が解ける。ワラを燃やした灰からとったアルカリ成分によって、コンニャクを固める。「さしみコンニャクにするのが一番です」という主人の勧めに沿って食べてみると、確かに風味がいい。

 自然放牧の酪農家が経営する乳製品工場では、濃厚なミルクと砂糖をじっくりと煮込んだ「ミルクジャム」の紹介である。今は廃線となっているが、かつての「宇津井駅」を訪問する。地上20メートルのところにプラットホームがあり、階段で上る。鉄道ファンの人気のスポットだそうだ。自動販売機で来訪の記念切符が買える。それぞれの観光スポットのインタビューと、設置された複数のカメラから送られてきた映像は、十分に楽しめた。参加者の中には、私のように実際にこの町に行ってみようと考えた人もいたはずだ。旅行代金は、名産品込みで2980円である。

 このツアーを主催した旅行社のエイチ・アイ・エス(HIS)のサイトを見ると、国内ばかりではなく海外の観光地のライブ配信によるツアーも数多くある。パンデミック(世界的大流行)が収束するのを見据えて、「予習」しておくのには、ガイドブックよりもいいかもしれない。

 「ズーム飲み会」も巣ごもりの中で、すっかり定着した。どうせなら、参加者が同じものを食べ、同じ酒を飲みたいものだ。

 三越伊勢丹のオンライン・ショップ「MOO:DMARK」は、商品を選んで、参加者のメールアドレスやLINEにURLを送る。参加者はそのURLに自分の住所を入力すれば、商品が届く。群馬県みなかみ町産の「氷室豚」のサラミソーセージを知人に送った。2160円だった。ビジネスパーソンでも、名刺の交換よりもMessengerやLINEの交換が好まれる。商品を送るのに、住所や電話番号を書くのは手間がかかる。コロナ禍の中で、百貨店の苦戦が続いている。三越伊勢丹のオンライン・ショップは全体で年商100億円を超えて、小さな光明である。「巣ごもり」から、どのような消費を見いだすか。企業の知恵の絞りどころである。

【プロフィル】田部康喜 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。福島県出身。

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