東日本大震災では津波被害や停電で基地局が停止し、通話の集中で電話がつながらないといった事態が全国規模で発生した。通信・IT各社はこの10年、震災を教訓に大規模な災害でも通信が途絶えることのないよう技術革新に力を入れてきた。通信網の防災力強化や最先端技術の導入で、大規模化する災害に、終わりのない取り組みを続けている。
総務省などの調査では、東日本大震災で、約400のNTT東日本の通信ビルが機能を停止、携帯電話の基地局も約3万局で影響が出た。携帯電話の通話が集中し、災害優先電話ですらつながりにくくい状況に陥った。全国の通信をつなぐ基幹ネットワークの伝送路が切断するなど、前代未聞の事態も発生した。
通信各社が震災を教訓に取り組むのは、通信インフラの強靱(きょうじん)化や早期復旧、復興支援の態勢強化だ。病院や役場などの重要拠点の通信を担う基地局では、大型蓄電池を整備。停電しても、仮復旧の目安とされる24時間は稼働できるようにするなど、通信網の防災力を高めている。
基地局が停止した地域に配備する移動基地局も、2016年の熊本地震ではソフトバンクが気球型の機器を投入。18年の北海道胆振東部地震では、KDDI(au)が船舶型基地局を運用するなど、通信確保の手段も多様化させている。基地局が復旧できない場合に利用する衛星通信のアンテナは約100キロから28キロにまで軽量化、作業員が1人で持ち運べるようになった。
人工知能(AI)などの最先端技術の導入も進む。NTTドコモは、全国の基地局の稼働状況をAIが監視。被害の把握に役立てている。ヤフーやLINE(ライン)は被害情報の収集などでAIを活用。デマ情報もあぶり出し、正確な避難情報などを伝える仕組みを構築している。(高木克聡)