携帯大手3社のオンライン手続き専用の新料金プランが17日のソフトバンクを皮切りに、月内に相次いで始まる。いずれも月額3000円程度で20ギガバイトまで高速のデータ通信が可能。大容量プランと比べれば負担が半額以下になるため、利用者にとっては乗り換え検討の好機だ。ただ、手続きがオンラインに限られ、携帯事業者のメールアドレス(キャリアメール)がないなど、乗り換えの際には注意も必要。菅義偉首相肝煎りの携帯業界の競争の活発化が実際に進むかは不透明だ。
17日にサービスが始まるのはソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」。KDDIの「povo(ポヴォ)」は23日から、NTTドコモの「ahamo(アハモ)」は26日から提供される。
20ギガ以上消費1割
各社が20ギガまでのプランに乗り出す背景には、日本の携帯電話市場では過剰なデータ通信量が契約に含まれているという事情がある。総務省によると、携帯大手の利用者のうちおよそ4割は20ギガ以上の契約をしているが、実際に20ギガ以上消費する人はわずか1割程度。ICT総研の斉藤和代表取締役は「多くの人、とりわけ単身や夫婦だけの世帯はオンライン専用プランで料金が安くなる可能性が高い」と指摘する。
このため毎月の通信量が10ギガ~20ギガで収まっている利用者にとって、オンライン専用プランへの乗り換えは有力な選択肢だ。昨年4月に本格参入した楽天モバイルも20ギガまでで1980円としている。
一方、数ギガバイトしか使っていない場合は、格安スマートフォンも候補にあがる。大手の動きを受けて値下げに踏み切っており、例えば2ギガまでで780円と格安のプランもある。
ただ、乗り換え検討の際には注意点もある。家族で同じ携帯電話会社を使って割引を受けるなどしている場合、新しいプランに乗り換えたとしても「世帯としてはむしろ支出が増える場合もある」(斉藤氏)からだ。スマホでのオンライン会議利用などで通信量が増えれば、20ギガでは足りなくなる可能性もある。
故障時対応に注意
また、大手3社のオンライン専用プランは申し込みや端末故障時の対応などが実店舗では受けられず、デジタルが苦手な利用者にはハードルが高い。さらに携帯キャリアメールは提供されず、携帯電話の機種によってはプラン自体に対応していない場合もある。
大手以外でも、格安スマホは大手から回線を借りてサービスを提供しており、昼や夕方など混雑時は通信速度が遅くなる傾向がある。サポート体制も大手と比べて弱い。
MMD研究所が2月に行った調査では、携帯電話の乗り換えを検討している人は全体の37.0%。しかもアハモなどオンライン専用プランの場合、乗り換えを検討している人の7、8割は同じ事業者内でのプラン変更を検討しており、各社間で顧客の活発な移動がなされるかは微妙だ。(林修太郎)