最新テクノロジー 変わる医療現場

(3)「最適」精子、AIが判別サポート

 ビッグデータから妊活時期予測も

 顕微鏡の中で動き回る無数の精子のうち、数個に青いマークが付けられた。形や大きさが良く、運動量も豊富だ。人工知能(AI)が受精に適していると判定した良好な精子だ。

 不妊治療では体内から取り出した卵子と精子を顕微鏡を使って受精させる。不妊の原因は男性側にある場合も多い。治療には良い精子を選ぶことが重要。東京慈恵会医科大とオリンパスは共同でAIが精子を選ぶ技術開発を進めている。

 AIは過去の精子データ約1500例を解析し、大きさやくぼみ、ゆがみなどから最適な精子の特徴を学習し、判別をサポートする。通常は胚培養士と呼ばれる認定を受けた専門スタッフが経験と勘を頼りに肉眼で選び、卵子に注入していた。

 卵子はダメージを受けやすいため、迅速に受精させなければならず、胚培養士には高度な技術が必要とされる。AIはたくさんの精子の中から瞬時に判別できるため、作業時間が短縮できる。

 オリンパスの担当者は「AIが選択肢を提示し補助をするが、最終的には胚培養士が判断する」と話す。数年以内の実用化を目指している。

 月経に関するビッグデータから妊活の時期を予測する研究も進む。妊活や体調管理のためのアプリ「ルナルナ」は、スマートフォンで月経周期や基礎体温、気持ちの状態を自分で詳細に入力する。従来は手帳に記入する人が多かったが、簡単にデータを入力できるようにした。

 運営する「エムティーアイ」(東京)と国立成育医療研究センター(同)が、サービスを利用する会員約30万人の情報を分析。これまで正常な月経周期は25~38日とされていたが、平均値は23歳に最も長くなり、45歳にかけて約3日間短くなることが分かった。

 同センターの鳴海覚志基礎内分泌研究室長は「最近は働く女性が増え、出産回数も違う。最新データから正確な月経周期と排卵日が予測できれば、最適な妊活のタイミングを知ることができる」と指摘する。

 日本では約5.5組に1組の夫婦が不妊検査や治療を受けている。新生児の約17人に1人は、体外受精など生殖補助医療によって誕生している。不妊治療は女性の身体的な負担が大きく、多額の費用も必要になる。最新テクノロジーの導入で治療への心理的なハードルが下がるなら、少子化問題への光明となるかもしれない。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus