渋滞時の高速道路で車の走行をシステムが担う「レベル3」の自動運転技術を搭載したホンダの新型「レジェンド」の報道陣向け試乗会が24日までに東京都内で行われた。レベル3に対応した世界初の市販車で、視覚や聴覚を通じてドライバーに注意を喚起する機能も備え、自動運転に不可欠な安全性を追求した「力作」だ。
今月5日に発売された新型レジェンドは、ブルーアクセサリーランプなどを施した外観が高級セダンの風格を漂わせる。カメラやレーダーのほか、衛星による位置測定と高精度な地図データも活用し、レベル3を実現した。
システム開発で実際の走行条件を想定して約1000万通りのシミュレーションを実施。テスト車両で国内の高速道路を約130万キロ走行し、実証実験を重ねた。
記者が乗り込んだ試乗車は東京都江東区の結婚式場を出発して一般道をさっそうと走り、首都高へ。ハンドル右側のスイッチを押すとシステムが作動し、ハンドル、アクセル、ブレーキの操作が不要となった。
車は車線中央に沿うように走行し、先行車との車間距離を維持。安全確認をしてウインカーを操作すると、システムが速度調整とハンドル操作を助け、スムーズに車線変更した。
「おぬし、やるな」と感心したが、ここまでの技術は運転支援にとどまるレベル2。渋滞が近づくにつれて減速し、時速30キロ以下になると、通知音とともにハンドルなどに付けられた表示灯が青く点灯した。レベル3技術「トラフィックジャムパイロット」の出番だ。
車は同一車線で車間距離を保ち、速度も調整。ナビ画面の下にあるボタンを押すと、DVDやテレビが視聴できる。
野生動物の映像を見て、渋滞時のストレスから解放されたが、油断は禁物だ。システムから運転を要求されれば、直ちに応じなければならない。渋滞の解消で時速50キロ以上になると、警告音と同時に表示灯がオレンジに。運転席前方の画面に「運転操作してください」との表示が出た。
100台の限定生産で、価格はメンテナンス料込みで1100万円。3年間のリース販売に限られるが、既に約50台の受注を獲得しているという。頼もしい走りの「伴侶」として期待されているようだ。
コストダウンなど課題は山積するが、自動運転をめぐる競争は世界的に激化している。ホンダを含め、日本勢メーカーが存在感を発揮できるか注目される。(宇野貴文)