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パナソニックの“7000億円買収” 市場から厳しく評価される2つの理由 (1/3ページ)

 ■「ブルーヨンダー」の買収報道に社内は沸いているが…

 パナソニックがサプライチェーン(供給網)の効率化を手掛ける米ソフトウエア大手、ブルーヨンダーを買収する方針を固めたと、3月8日に日経新聞電子版が報じた。投資額は7000億円を軸に調整しているとされ、実現すれば同社にとって過去最大級のM&A(合併・買収)になる。

 ブルーヨンダーは1985年にJDAソフトウエアとしてカナダで創業した。在庫管理や物流の効率化を手掛け、2018年に人工知能(AI)開発に強い同業の独ブルーヨンダーを買収。20年に現社名に社名変更した。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や独DHL、米スターバックスなどが同社の業務改善ソフトを導入している。

 世界に40以上の拠点を持ち、従業員は5000人超。19年度の売上高は前年度比8%増の約10億ドル(約1085億円)だった。売上高に対するEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)比率は24%と、パナソニックより一ケタ大きい。

 液晶や太陽光パネル事業に次ぎ半導体事業を売却するなど身を縮める発表が相次いだ中での久々の「攻め」の施策と社内では沸く。

 ■「買収額が大きすぎる」と「競合が多すぎる」という2大要因

 しかし、市場は今回の買収を必ずしも好感しているわけではないようだ。買収協議が報じられた翌日、3月9日のパナソニック株の終値は前日比7%の下落となった。その理由は大きく2つある。

 ひとつは7000億円という「買収額の大きさ」だ。パナソニックは1兆4713億円(20年3月期)という多額の有利子負債を抱えており、今回の大型買収で財務のさらなる悪化が懸念されている。

 もうひとつの理由は「競合の多さ」だ。パナソニックの狙いは「企業向けのソリューション・ビジネスの強化」だろう。ブルーヨンダーは人工知能(AI)を活用し製品の需要や納期を予測するソフトを手掛け、顧客企業のサプライチェーンを見直し、収益改善を支援する。

 かつて米IBMもパソコンやサーバーなどハードウエアの販売がデルコンピュータなどライバルの台頭で消耗戦に陥った時に、ソフト・サービス路線に舵を切った。同時にコンサルティングなども手掛け、顧客企業との継続的な取引を目指す戦略に活路を見いだした。

 ■買収を主導したのは、“異例の出戻り役員”の樋口泰行専務か

 欧州でも同じ電機大手の独シーメンスが強みだった工場の制御機器を基に、ソフト分野の企業買収を通じサービスを組み合わせて収益力を高めた。日本でも「すでに製造業ではない」(東原敏昭社長兼CEO)と言い放つ日立製作所が、独自のIoT基盤「ルマーダ」を軸に利用で稼ぐ継続課金ビジネスを手掛けている。世界の電機大手は「モノづくり」から「ソフト・サービス」の展開を急いでいる。

 さらに「企業向け業務改善システム」の分野では、IBMや日立、米アクセンチュアなどコンサルティング企業のほか、最近では米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス部門「AWS」が参入するなど、競合がひしめいている。

 今回の買収を主導したのは、新卒でパナソニックに入社したあと、アップルやマイクロソフトなどを渡り歩き、2017年に古巣のパナソニックの幹部として呼び戻された樋口泰行専務執行役員とみられている。樋口氏は企業向け取引を担うコネクティッドソリューションズ社を率いる立場にある。

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